横浜FMに足りなかったもの

横浜FMはGK一森純や最終ラインからのパス回しの際、MF山根陸と永戸の両サイドバックが自陣後方に張り付く。これにより、特にキックオフ直後は湘南のハイプレスの餌食となった。

喜田と渡辺の2ボランチが、自軍のセンターバックとサイドバックの間へ降り、湘南陣営のハイプレスを回避するなどの工夫もあまり見られず。自陣での隊形変化をより多く織り交ぜること。これが横浜FMの今後の課題と言えそうだ。


湘南ベルマーレ MF永木亮太 写真:Getty Images

後半は湘南の運動量が低下

一方の湘南は、前半と後半開始直後はハイプレスが機能していたものの、後半13分あたりからチーム全体の運動量が低下。横浜FMが自陣後方でパスを回した同13分では、左サイド(湘南の右サイド)でボールを受けたDF永戸や途中出場のFW西村拓真への寄せが緩く、アウェイチームの前進を許してしまった。

横浜FMが自陣からのロングパスを織り交ぜるようになり、特に後半は湘南が守備隊形を間延びさせられる展開に。基本布陣[3-1-4-2]の中盤の底、MF永木亮太の両脇を横浜FMのFWアンデルソン・ロペスやマルコス・ジュニオール、西村に使われ続けたことも劣勢の原因となった。


湘南ベルマーレ 山口智監督 写真:Getty Images

「落とし込みが足りなかった」と山口監督

湘南の山口監督は試合後コメントで自軍の選手を労うとともに、自身の反省点を挙げている。

「去年は(横浜FMに)全く歯が立たなかったんですけど、なんとか積み上げてきたものを出して勝とうという話をして臨んだ試合でした。前半のところで言うとチャンスもありましたし、ピンチもありました。選手の表現の仕方や試合に取り組む姿勢というのは、すごく前向きなところがあったので、ポジティブな要素がある反面、自分自身はまだまだ(選手への)落とし込みが足りないなと感じました。試合ではミスから失点して、よく1点取り返したなと。失点をして崩れることもあるので、そういうことを考えるともうちょっとのところだと思いますし、そのもうちょっとのところが難しさでもあるので、終わってから選手には向き合っていこうという話をしました。試合としては、勝ちたかったですけど、素晴らしいチームに対してよく追いついたなと。そういうゲームになりました」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部補正)

チーム全体の運動量が低下し、ハイプレスがままならない時間帯があったとはいえ、前線での良い守備から速攻を繰り出せたのも確か。神出鬼没なポジショニングで相手の守備隊形を乱してくる横浜FMの左サイドバック永戸を、タリクによるマンマークで抑えたのも流石だった。

湘南の今後の課題は、チーム全体の運動量が低下する後半をいかに凌ぐかだろう。今節の後半13分以降のようにハイプレスがままならず、MF永木(中盤の底)の周囲を相手に使われ続ける展開では、一旦[3-4-2-1]や[5-4-1]の布陣による撤退守備に切り替える。そのうえで選手交代を行い、チーム全体の運動量を回復させてから再度ハイプレスのギアを上げるのが得策だろう。山口監督の試合中の修正力の向上が、湘南の上位進出には欠かせない。