大麻の一部合法化の目的について、ラウターバッハ保健相は、「大麻の消費をより安全にすることだ。明確な制限内で成人への大麻の管理された消費だ。私たちは闇市場と闘ってきた。これまでの大麻規制は失敗した。全国的に記録された薬物犯罪件数は年々、増加してきた。刑法の強化では解決できない。だから、大麻の部分的合法化を通じて麻薬関連の犯罪を撲滅していきたい」と語った。オズデミール農業相は、「これまで不法に麻薬を取り扱ってきたディ―ラーたちは怒っているだろう」と述べた。なお、今回の改正法案は成人の消費を対象としたもので、医療目的は別だ。

ラウターバッハ保健相によると、大麻の第1段階の合法化は今年末までに実施され、関連する法案は4月中に提出される予定だ。「商用サプライチェーンを備えたモデルプロジェクト」を可能にする「第2の柱」に関する法案は、「夏休みの後」となるという。

データが少し古いが、2018年の疫学中毒調査の統計によると、18歳から64歳までのドイツ人の4分の1以上が、人生で少なくとも1回は大麻を摂取している。大麻の消費は近年、若年成人の間でも増加。連邦保健教育センター(BZgA)によると、18歳から25歳のほぼ50%が2019年に少なくとも1回大麻を使用している。12歳から17歳では10人に1人だった。18歳から25歳の5・7%が定期的に大麻を摂取している。ちなみに、ドイツでは毎年200~400トンの大麻が消費されている。これは少なくとも12億ユーロ(約1650億円)の市場価値に相当し、そのほとんどが組織犯罪グループに流れている。

大麻消費の合法化を主張する者は、大麻の取り締まりに多忙だった警察側は他の犯罪対策に人材を使えるようになり、警察側や司法側のコストを節約できる。そのうえで、組織犯罪との戦いに専心できる、というものだ。一方、野党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)は「大麻という麻薬の危険性を過小評価している」、「大麻消費による健康リスク」、「合法化の結果、消費が増加し、他の麻薬類への道を開く」等々を挙げ、大麻の合法化には反対している。ドイツの警察組合も「大麻の合法化を実施しても、不法な麻薬取引は減らない」と主張し、大麻の合法化には反対している。

なお、ウィーンに本部を置く国際薬物犯罪事務局(UNODC)は、「麻薬でハードとソフトに区別はない。ソフトの大麻を常習すれば、健康に悪影響が出てくる。特に、成長段階の若い世代にとっては危険だ」と警告を発している。

ショルツ政府は大麻関連法案についてブリュッセルの欧州委員会に通知し、欧州の関連法に基づく審査を受けなければならない。欧州委員会がドイツの法案を国際法違反として拒否権を行使する可能性は排除できない。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年4月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。