大阪統合リゾート、発進!

まず、一点、初めに申し上げたいのは「リゾート」という言葉遣いに違和感があるのです。リゾートの語源は古いフランス語のre(もう一度)とsortir(行く)という意味で、基本的には非日常の中でリラックスし、英気を養うところです。業界では議論になるのですがディズニーやUSJはリゾートかと言えばNOなのです。人造の装置の上で人間がもて遊ばれるところはリゾートではなく、大自然の中で人間が戯れ、想像し、時として無になれるところが本質的なリゾートと考えています。

それはさておき、大阪の人工島に1兆円超の投資をしてIR統合開発が決まりました。もともとは国内3か所を予定していたのですが、長崎は基準に満たず、横浜、札幌は地域の意見が集約されませんでした。経済効果だけで考えるなら沖縄がベストでしょう。理由は世界水準からみれば沖縄は天候不順でリゾート適格性が低い中、屋内施設が代替になり、外国からの集客が期待できるからです。なので北海道もアリだと思います。

カジノについてはもはや時代遅れの産物でもっと想像力のある日本ならではのアイディアを提供してもらいたかったと思いますが、許可条件はカジノが全体延床の3%以下ですのでおまけ的なものと考えてよいでしょう。私ならカジノとして日本のお家芸、パチンコを導入し、代わりに街中のパチンコ屋を撤廃すべきかと思います。カジノは個人が目の色を変えて賭け事をするところというイメージがあるのですが、アミューズメントセンターとしてカップルや友人、夫婦が楽しく遊ぶテーマパーク的に展開すべきでしょう。さもなければラスベガスのように高齢者の暇つぶし場所と化します。

大阪府HPより

力を注ぎたい工業デザイン

東京ビックサイトで開催される介護機器のイベントには確か4-5回連続でお邪魔しているのですが、前回お風呂の介助用機器のコーナーで日本を代表する大阪の某社の製品が大々的に展示されていたので説明を受けました。ただ私はショックだったのです。機能としては悪くないのですが、工業デザインとして最低で、凹凸が多く、ボルトの頭があちらこちらにあります。説明してくれた方に「申し訳ないけれど、これは頂けない商品ですね」とはっきり申し上げました。びっくりした顔をするその方に「濡れる場所での使用だし、ある程度拭き掃除も必要ですね。だけどこんなにボコボコしていたらどうやって日々の掃除をしますか?」と。

日本の工業デザインは機能性を重視したものが多いのですが、見た目に美しくないものが多々あります。サービスにお金をかけない日本と言いますが、動けばデザインなんて何でもいいだろうと言わんばかりのものも多いのです。今週号の日経ビジネスの「有訓無訓」に元日産自動車でデザイン部門のトップだった中村史郎氏が「デザインの役割は大きい。日本市場だけ見ていると気付かないですが、韓国勢は当然のこと、中国勢もその方向に戦略をシフトさせています。モノづくりへの情熱と新しいものに挑戦する力で我々は負けている」と断じています。

ところで私が当地で不動産開発を始める際、プロジェクトのロゴマークをカナダ人のプロの方に作って頂きました。何度も修正を重ねて出来た「葉っぱが水に落ちる日本的な美的センス」のロゴマーク製作費は今から28年前に驚愕の100万円でした。その後業務上、様々なロゴを作ったのですが、どれも陳腐。結局その100万円のロゴに勝るものはないのです。そのロゴのセンスはプロジェクトの品質も示すものとなり、高級コンドミニアムの先駆けとして当時、圧倒的な地位を築いたのです。工業デザインも同じです。価格競争の末の安物から脱皮し、所有者が自信を持てる商品に変えていくことが日本企業の使命です。

後記 当地で流行らなかった居酒屋の後に有名居酒屋チェーンが入居し大盛況でした。違いはたくさんありますが、ポイントは2つ。1つは改善も工夫もないメニューは今や誰も見向きもしないこと、もう1つはSNSのチカラはすさまじい点です。事務所の近くにある韓国人が経営するとんかつ屋。味は普通ですが、プレゼンが上手で日本のデパートのとんかつ屋みたいな感じです。ごはん、みそ汁、キャベツお代わり自由は日本なら普通なのにこちらで誰もやらなかった「先鞭」です。工夫のしどころはいくらでもある、ということです。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年4月15日の記事より転載させていただきました。