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長期的な人口減少が深刻です。先日発表された人口統計で、日本人の減少幅は戦後過去最大となったことがわかりました。

「人口減少」「少子高齢化」が急加速…日本人人口1億2203万人で過去最大の減少幅に…コロナ禍で弱まった「東京一極集中」の流れも再び加速

中でも子供(年少人口)の減少は目を覆いたくなるばかりで、人数も総人口に占める割合も40年以上連続して減少するなど、年齢が低いほど人数は少なくなっていますので、今後総人口とともに子供の数もますます減っていくことが予想されます。

我が国における総人口の長期的推移

1、2ページをみると、日本の総人口は2050年には1億人を切り、2100年には5千万人を切ると予測されています。27年後の2050年には、子供(15歳未満)の人数は今(1465万人)の56%にまで減り、逆に高齢者(65歳以上)は総人口の4割を占めるまでになってしまいます。こんな国は世界のどこを探してもありません。

こうした人口動態からすれば、単なる「地方移住」は減り続ける人間をお互い奪い合うだけになってしまいますし、年金は多少支給年齢を引き上げても、現在のシステムではいずれ破綻する可能性が高いと考えられます。

出生数(率)を上げて人口増加を図ることは少子化対策の王道ですが、そのためには子供を産む女性の人数が増えなければなりません。現在に至るまで出生数は毎年減少の一途をたどっていますから、今すぐ合計特殊出生率(女性が一生の間に産む子供の人数の平均)が上昇に転じても、絶対数はすぐに増加しません(子供を産める女性の人数が2割減れば、出生数増加のためには合計特殊出生率を25%上げなければならない)。

つまり子供を産む適齢期の女性の人数が20~40年後まで減り続けるなかで、いくら頑張って一人当たり産む子供の数を増やしても、ほとんど相殺されてしまうということです。出生数が増加した年代の女性が出産適齢期に達し、かつ合計特殊出生率も上昇することでやっと人口が増加していく流れができますから、相当の年数が必要になります。

こうしてみると50年~100年先の長期プランとしては「出生数の増加」は適切な施策ですが、高齢者数がピークに達する約20年後には到底間に合わず、人口減少は止められません。では二千数百万人減る分を移民で補えるかといえば、ちょっと現実的ではないでしょう。

ですから人口減少・少子化対策については、「長期人口減少は絶対に避けられない」現実の直視と、「人口減少は悪いことばかりでなくメリットもある」という発想の転換が必要になります。

まずは長期的人口減少のデメリットを考えてみます。

① 絶対的な人口不足がもたらすもの

日本のGDP(国内生産力)の低下(世界における日本の経済的地位低下) 労働力(生産年齢人口)の減少によるマイナス経済成長 空き家・空き地、限界集落の増加 一部の外国(人)による国土爆買いの恐れ

② 超少子高齢社会がもたらすもの

年金・医療費・社会保障費の急増による国家財政の破綻 上記と連動した地方自治体の住民サービスの低下・財政破綻 医者・看護師・介護士・高齢者施設の不足による健康不安 学校統合の加速化や子供関連産業の衰退

何か悪いことだらけのようですが、見方を変えれば次のようなメリットも見えてくるのです。

労働者の絶対数が減る分、仕事の重複・無駄が減り、労働生産性が高まりやすい 上記の労働生産性が高まれば、一人当りのGNI(国民所得)は増える(仮に人口が30%減、国全体のGNIが20%減なら、一人当りGNIは一割以上増える) 過密地域が減って地価が下落、空き家増加で中古住宅価格も下がり購入しやすくなる 使用放棄された土地を農地転用できれば、食糧増産→自給率向上につながる