「4月15日」はどちらに転ぼうが、ドイツの歴史に記される日となるだろう。ドイツが他の先進諸国に先駆けて原子力エネルギー時代に別れを告げ、再生可能なエネルギー立国を目指す記念すべき日となるが、欧州の経済大国ドイツが慢性のエネルギー危機に陥り、輸出国ドイツが凋落する日となるかは、脱原発後のドイツの「その後」は現時点では分からない。

原発問題で意見が対立するリンドナー財務相(左)とハベック経済相(独公営放送「ドイチュランドフンク」2023年2月16日から)

操業37年後、2021年末にオフラインとなったグローンデ原子力発電所 Wikipediaより
社会民主党(SPD)、「緑の党」、自由民主党(FDP)の3党から成るショルツ連立政権は昨年、操業中の3基の原発を含む全原発を年末までに停止する予定だったが、FDPを中心に「再生可能エネルギーだけでは国内のエネルギー需要をカバーできない」という声が高まってきた。
ドイツの脱原発は2000年代初頭のSPDと「緑の党」の最初の連合政権下で始まった。SPDと「緑の党」は原発操業の延長には強く反対する一方、産業界を支持基盤とするFDPは3基の原発の23年以降の操業を主張し、3党の間で熾烈な議論が続けられてきた。
最終的には、ショルツ首相は「緑の党」とFDPと交渉を重ね、2022年10月17日夜、首相の権限を行使し、2基ではなく、3基を今年4月15日まで操業延長することで合意した。具体的には、バイエルン州のイザール2、バーデン=ヴュルテムベルク州のネッカーヴェストハイム2、およびニーダーザクセン州のエムスランド原子力発電所だ。