経営再建中のアパレル大手・三陽商会が、2020年3~8月期の決算を発表した。赤字額は66億円超まで膨らみ、先行きにさらなる暗雲が立ち込めている。160店舗の閉鎖で黒字化を目指すシナリオも発表されたが、三陽商会は復活できるのだろうか。

三陽商会が黒字化を目指し「160店閉鎖」を計画

三陽商会は2015年の英バーバリーとの契約終了などが響き、業績の低迷に苦しんでいる。自社ブランドを中心に事業を転換したが振るわず、これまでに希望退職の募集や社長交代が頻繁に行われている。

そんな三陽商会が2020年3~8月期の決算発表に合わせて発表したのが、黒字化達成に向けたシナリオだ。

黒字化に向けて160店を閉鎖予定

このシナリオにおいて最も注目すべき点は、2021年2月までに百貨店において約160の売り場を撤退することだろう。

「選択と集中」を強化し、是が非でも黒字化を達成させる考えのようだ。三陽商会の資料によれば、8月末時点ですでに百貨店における130の売場を撤退済みだという。直営店においても店舗採算を再検証し、不採算店舗を撤退する計画だという。

ECの強化をさらに推進

その他、黒字化に向けたシナリオの中で三陽商会が掲げているのが、EC(電子商取引)の強化だ。2020年上半期の売上高は、自社ECサイトが28億4,200万円、外部ECサイトが7,500万円で、前年比118%。今後さらなる売上増を目指して注力していくという。

決算発表資料には「リアル店舗の売上高減少をEC/アウトレット成長でカバー」と明記されており、アウトレット部門も強化していく考えのようだ。

三陽商会の2020年3~8月期の業績状況はすべて赤字に

三陽商会の業績を見ると、営業利益・経営利益・純利益のすべてが赤字になっている。詳細を見てみよう。

  • 2020年3~8月期の売上高:153億2,800万円
  • 営業利益:57億1,200万円のマイナス
  • 経常利益:57億3,800万円のマイナス
  • 最終損益:66億4,800万円のマイナス

店舗を主力としているアパレル企業は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けている。都市部では多くの店舗が営業を自粛せざるを得ない状況になり、消費者も外出を自粛した。

三陽商会も、3月後半から店舗の営業を自粛。5月から段階的に再開したものの、ビフォーコロナの売上水準には遠く及ばない状況だ。ECが好調であることは、同社にとっては一筋の光と言えよう。

株式マーケットが回復傾向にある中、株価低迷が続く三陽商会

三陽商会の株価は、以前からの業績低迷と新型コロナウイルスの影響によって、低迷が続いている。

2020年2月には一時1,500円を超えたが、4月に入って1,000円を割り込み、7月には500円台にまで落ち込んでいる。この半年で、3分の1程度になったということだ。10月8日の終値も574円と、株価回復の兆しは見えていない。

東証株価指数(TOPIX)は3月中旬に底を打っており、それ以降は上昇に転じている。しかし三陽商会の株価は、マーケットの上昇の波に乗り遅れている。新型コロナウイルスの影響を差し引いても、多くの投資家が三陽商会の業績に大きな不安を感じていることがわかる。

アパレル業界は破産ドミノ、コロナの影響で経営破綻したブランドも……

三陽商会に限らず、コロナ禍が起きてからアパレル業界は非常に厳しい状況になっている。民間調査会社の東京商工リサーチの調べによると、負債総額1,000万円以上の経営破綻は10月7日時点で571件、そのうちアパレル関連(製造・販売)が63件と飲食業に次いで多い。

1位,飲食業 90件
2位,アパレル関連(製造・販売) 63件
3位,宿泊業 50件

アパレル関連では、「レナウン」の経営破綻が記憶に新しい。「レナウン娘」のCMで一世を風靡したレナウンは以前から業績低迷に苦しんでいたが、新型コロナウイルスによって息絶えてしまったのだ。

百貨店の休業がアパレル関連企業の業績に影響を与えたことは確かだが、消費者の行動の変化も店舗型のアパレル企業にとってはマイナス要素である。その変化とは、店舗ではなくECを利用する人が増えていることだ。

コロナ禍の中で始まった秋冬シーズン、厳しさ続くアパレル業界

Go Toキャンペーンによって宿泊業界や飲食業界は徐々に活気を取り戻しつつあるが、アパレル業界はまだ国の消費喚起策の恩恵をあまり受けていない。その中で、2020年の秋冬シーズンの商戦は幕を開けた。

三陽商会が復活を果たすためには、不採算店舗や売り場の閉鎖だけでなく、前述の消費者行動の変化にも対応していく必要がある。特にECをどこまで伸ばせるかは、多くの投資家が注目しているはずだ。

 
執筆・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)

国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。  

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