同様に、

自分が「チョキ」を出して勝つ確率:31.7% 自分が「パー」を出して勝つ確率:35.0%

となります。つまり、「パーを出すのが最も勝ちやすい選択」ということです。

この勝率の差は「誤差の範囲」ではないかと思うかもしれませんが、統計的に意味のある差であることがわかっています(これを「有意差」といいます)。心理学的には「人間は警戒心を持つと、拳を握る傾向がある」という説のほか、「チョキはグーやパーと比べて出しにくい」という説もあります。

クセというのは、人が無意識時により出やすいので、相手が酔っ払っているときや疲れているときはチャンスかもしれません。また、こちらからじゃんけんを仕掛けるときは「最初はグー」という掛け声をスピードアップし、相手に考える余裕を与えないようにすることで、クセがより出やすいのではないでしょうか。これが、じゃんけん初手(最初になんの手を出すか)での戦略です。

あいこになったら何を出せばいい?

この研究では、「あいこになったときは、次になんの手を出せばいいのか?」についても調べています。その結果、あいこになったとき、次も同じ手を出す確率は22.8%ということがわかりました。

例えば、自分が一度目に「グー」を出し、相手も「グー」を出しあいこになったとします。すると、次に相手がまた「グー」を出してくる確率は22.8%だということです。

もしランダムで「グー・チョキ・パー」を出しているなら、それぞれの確率は1/3(約 33%)になるはずですので、22.8%というのはかなり低いことがわかります。「なんとなく、同じ手ではなく違う手を出したくなる」という選択のクセがあるようです。

それでは、「相手が同じ手を連続して出す確率は低い」ということを利用して、あいこの次の手で勝つ確率を上げる方法を考えてみます。

例えば、自分と相手が同じ「グー」を出してあいこになったとします。次に相手が出す手が「グー」である確率は22.8%ですから、それ以外の手(「チョキ」か「パー」)を出す確率は77・2%(=100%−22.8%)です。ということは、「チョキ」を出しておけば77・2%の確率で負けないということになります。

同じように、ほかの手についても負けない確率の高い手を考えると、一度目にあいこだった手が、

「グーの場合」 :二度目は「チョキ」を出す 「チョキの場合」:二度目は「パー」を出す 「パーの場合」 :二度目は「グー」を出す

これが最善の手となります。覚え方は簡単です。「2人でじゃんけんをしてあいこになったら、次に自分はその手に負ける手を出す」ということです。

サトウマイ 合同会社デルタクリエイト代表社員 データ分析・活用コンサルタント 国立福島大学経済経営学類卒業。一般企業就職後、26歳で独立、データ分析・統計解析事業を始める。現在は企業のマーケティングリサーチや需要予測調査、商品開発支援などを行っている。数学アレルギーから学生時代より文系の道に進むが、統計学と出会いアレルギーを克服。株式会社野村総合研究所主催の「マーケティング分析コンテスト」入賞。学生や社会人向けに、データ分析をリアル謎解きとして楽しみながら、仕事に役立つ実践的なトレーニングを行っている。

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年4月7日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。