私たち個人の人生でも、うまくいかない時ほど「何か新しいことを始めないと」と思いがちですが、そんな時に何かに手を出すほどもっと泥沼にはまっていく、というご経験がおありではないでしょうか?

焦って新しい何かを追い求めようとするよりも「それまで大事だと思い込んでいたことを手放す」ことのほうが根本的な解決につながるものです。

朝活でヨガを始めるよりも寝る前にスマホをいじる習慣をやめたほうが活力がアップするとか、色々なサプリを取ろうとするよりも酒飲み友達との関係を見直していくとか・・・。

この法則は個人の集合体である組織にもあてはまります。

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“盛り上げるためにイベントをやろう”で空回る

「ムダな努力で組織の衰退に拍車がかかる」ことの例として、日本各地の自治体による「地域おこしイベント」があげられます。

「人口減少」に悩む日本全国の地方自治体は、「地域おこし」を目的にイベントを開催し、人を集めようと試みます。 が、こうしたイベントで集まった人が定住につながる例は稀であり、たいていは予算や労力を浪費するだけの結果に終わっているのは、比較的よく知られています。

「予算や労力を浪費する」だけに終わるのであればまだ良いほうで、“トラブルメーカー”的な人物が流れてきてしまい、地域の人にとって悩みの種となってしまう、という話もしばしば聞かれます。

筆者の身近でも「地域おこし」ではありませんが、会員数の減少に悩む「コワーキングスペース」が誤った施策を打ち続けている結果、会員減少がさらに進んでいる事例があります。

コワーキングスペースというのは、テレワークの会社員や特定のオフィスを持たないフリーランスが作業場をシェアする、いわゆる“自習室”の仕事場版のようなものです。

近年はテレワークを推進する企業が増えてきたこともあり、このコワーキングスペースという業態は盛況となっています。 にもかかわらず、ここ最近会員数の減少に歯止めがかからないコワーキングスペースが筆者の身近にあったのです。

次々と会員がいなくなる状況を受けて、コワーキングスペースの運営陣が対策を話し合っている様子を近くで見る機会があったのですが、そこで打ち出されていた対策というのがまさに「イベントを増やして人を呼び込み、盛り上げよう」というものでした。

客観的に見れば、この「イベントで人を呼び込む」という施策が誤りであり、会員の増加につながらないどころか流出に拍車がかかることは明らかでした。