日本人の牛乳離れ
日本人の牛乳離れも、その予兆が見られた。農林水産省の畜産統計によると、日本の酪農家の戸数は1963年に41万8000だったが、2022年には1万3300ほどとなっている。
コロナショックで学校の度重なる休校に加え、ロシアウクライナ由来のインフレで、餌代が大きく高騰したことで直近でも非常に厳しい状況に置かれた酪農は少なくない。筆者の知っている業者もやめるか?続けるか?の究極の選択を迫られている。
日本人の牛乳消費の減少の原因について、農畜産業振興機構は「人口減少、少子高齢化に加え、飲料市場の多様化で競争が激化した」と分析している。昨今の日本でのインフレはそれに拍車をかけているだろう。牛乳の消費が減れば、グラタンやアイス、ケーキなど牛乳を使用する食品に価格が転嫁されて影響が出る。
牛乳を飲むメリットがなくなっている?こうした結果を俯瞰すると「牛乳を飲むメリットがなくなっているのでは?」という事情が見えてくる。個人的に牛乳は昔から大好きで今でもよく飲む。世の中から牛乳がなくなってしまうのはとても困るので、できれば日本のおいしい牛乳の存続を心から希望している。だが、そんな牛乳愛好家の筆者でも飲む理由は「おいしい」という点を除けば、ほとんど答えることが難しい。
健康面については、喘息を持たない健常者にも複数の問題が指摘されている(本稿では長くなりすぎるので割愛)。環境問題についていえば、牛のメタンガス排出による温室効果ガス問題が取り上げられる。
こうなってくると牛乳は「健康のために積極的に飲みましょう」というより、「ジュースなどの嗜好品と同じ位置づけ」という見方ができるのではないだろうか。しかも相対的に割高だ。残された道はバターなどの加工品としての用途になるだろう。これも結局「味」というのが唯一のメリットかもしれない。
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今、牛乳は岐路を迎えている。今から20年後、いや10年後も牛乳は現在のように手軽に買うことができる存在であり続けるのだろうか?
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