システムのリダンダンシー

ANAでは今月3日、国内線システムで障害が起こり、国内線全便の予約・販売・搭乗手続きができなくなり、利用者へのANAアプリでの案内もできなくなった。その結果、同日の国内線55便が欠航、153便が30分以上の遅延となったが、航空経営研究所主席研究員で桜美林大学客員教授の橋本安男氏はいう。

「今回ダウンした旅客システムは予約やチェックインなどの機能を持つが、ANAアプリが使えなくなったことで、利用者は遅延・欠航に関する情報をアプリから入手できなくなった。一方、空港内の電子掲示板は航空機の運航を管理する運航系システムとデータ連携しているため、利用者は電子掲示板から遅延・欠航情報などの情報を得ることができる。大型電子掲示板が撤去されることによって、スマホを使いこなせない中高年や、荷物で手がふさがっていたり小さなお子さんを抱える利用者が不便さを感じるというデメリットに加え、まれにシステム障害でアプリが使用できなくなった際に遅延・欠航などの運航情報にアクセスしにくくなるというデメリットも生じる。システムのリダンダンシーの観点からも、誰もが見やすい大型電子掲示板が設置されているほうがベターではあろう」

ANAが大型電子掲示板を撤去した背景について橋本氏はいう。

「コロナ禍で一時的に財務が悪化したANAは、航空事業一本だけに依存するリスクを認識し、デジタル戦略としてスーパーアプリ構想を掲げて、ANAマイレージクラブアプリ上でECモールや決済のANA Pay、ホテル予約などさまざまなサービスを展開している。そうした顧客の囲い込みの動きのなかで、電子掲示板や自動チェックイン機を撤去して、予約やチェックイン、情報の案内などをANAアプリに集約し、利用者をアプリを通じてANA経済圏に誘導しようという意図があるのではないか。JALとは対照的なANAらしい攻めの経営と評価できなくもない」

ANAは全国51空港に437台設置している国内線の自動チェックイン機についても2023年度中に廃止し、チェックインや発券手続きを搭乗者がモバイルアプリで行うことを促す。

(文=Business Journal編集部、協力=橋本安男/航空経営研究所主席研究員、桜美林大学客員教授)

提供元・Business Journal

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