BBC、スカイテレビは

昨年10月、公共放送BBCは「柔軟な働き方についての方針」と題された文書を作成した。「柔軟な働き方」としてパートタイム勤務のほかに、タームタイム(授業が行われている学期中のみ勤務)、リモート勤務、ハイブリット勤務、常に家庭での勤務、職務シェア勤務、一時休暇制など、12の選択肢が挙げられている。

BBCの報道部職員がプレス・ガゼットに語ったところによると、「人事部を含めほとんどの部署で柔軟な勤務体制が取られてきたが、報道部門は例外だ」。BBC広報によると、「報道部の補助スタッフは週に2~3日の出社」という。

衛星放送のスカイニュースの場合も、週に2日、自宅勤務を認めるハイブリッド型を採用しているが、放送記者の場合はスタジオや現場からの出演になるため、これが必ずしも当てはまらなくなる。

日刊紙「デイリー・ミラー」と日曜紙「サンデー・ミラー」のアリソン・フィリップス編集長は記者に対し頻繁に出社するよう呼びかける。編集スタッフ同士の「つながりを強化する」「創造性を生み、編集スキルや価値観を伝える」ことができるからだ。新たに採用されたスタッフには特に、編集室での作業が「いかに楽しいものか」を伝えたいという。

ハイブリッド型勤務は今後も続くだろうか?

国家統計局がコロナのロックダウンで自宅勤務となった人々に今後の意向を聞いたところ、8割がハイブリッド勤務を望んでいた(昨年5月23日発表の調査)。昨年2月時点でハイブリッド勤務者の割合は13%だったが、5月には24%に増加した。

下院調査(昨年10月発表)では、ハイブリッド勤務の利点として幸福感の増大、仕事達成の満足感、プライベートな生活とのバランス向上などが挙げられ、不都合な点としては長時間労働、健康への悪影響、他者との関わりおよび昇進の機会の減少、公私の区切りが困難などが挙げられた。

筆者はかつて新聞社にいたが、時には罵声が飛び交う編集室で同僚や上司と協力しながらモノを作り上げる作業には、独特の真剣さと楽しさがあった。取材で外に出ていても、最後は編集室に戻る。編集室は本拠地であり、仲間とつながる場所でもあった。週に2-3日の出社となれば、つながりは緩くなりそうだ。

しかし、週5日の出社が当然視される働き方は、少なくとも英国のメディア界には戻ってきそうにない。テクノロジーの発展によって自宅やほかの場所でも出社した場合に近い作業環境を実現できるようになったことに加え、若者を中心により自由度が高い勤務体制を望むようになっているからだ。もはや後戻りはできない。

(「新聞研究」3月号掲載の筆者コラムに補足しました。)

編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2023年4月4日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。