ロシア軍のウクライナ侵攻直後、米欧諸国は2022年2月25日、安保理事会にロシア非難決議案を提出したが、ロシアが拒否権を行使して否決された。安保理事会で米英仏露中の常任理事国5カ国が拒否権を保有している限り、ウクライナ危機では国連は何も効果的な決定を下すことができないのだ。これが国連の「現実」だ。

第2次世界大戦終了直後に創設された国連は現在の世界情勢を反映していない。特に、安保理常任理事国5カ国体制は機能していない。国連の無能化の主因だ。常任理事国の拒否権を廃止しない限り、国連は紛争解決能力を持つことができない。もう少し厳密にいえば、強権大国ロシアと中国共産党が入った安全保障理事会は機能しないのだ。

ウクライナの国連常駐代表、セルギー・キスリツァ氏は、「4月1日は、不条理のレベルを新たなレベルに引き上げた。安保理は現在の形では麻痺しており、安保理の重要な問題、紛争防止と紛争管理に対処することができない」と述べている。同大使は、「重大な国家安全保障上の問題でない限り、ウクライナは4月の安保理事会に参加しない」と表明している(ウクライナは現在、理事会のメンバーではないが、議題がウクライナ戦争の時、これまで頻繁に発言してきた)。

多数の児童をウクライナからロシアに拉致連行するなど戦争犯罪をほしいままに行うロシアに対し、国連はロシアを追放すべきだ。それが出来ないというのならば、現国連機関を早急に解体し、同じ価値観、世界観を有する国が新しい国際機関を創設して再出発する以外にないだろう。

ロシアのネベンジャ国連大使は3日、記者会見し、ウクライナなどからの批判に対し、「議長国の権限を乱用することはない」と牽制している。同大使によると、「今月24日に国連憲章の原則の擁護をテーマに公開討論を開く。ラブロフ外相が議長を務める予定だ」と明かした。米国、英国、フランスらは、ロシアが主催する国連イベントへの参加を拒否することで、ロシアへの抗議の意思表明をする方針といわれる。

国連総会は2月23日、ロシアによるウクライナ攻撃を非難し、ロシア軍の撤退を求める決議案を採択した。決議案には141カ国が賛成し、7カ国が反対。中国など32カ国は棄権した。決議案には法的な拘束力はない。同決議案に対し、ロシアは無視してきた。ここで注目すべきは、国連加盟国193カ国中、141カ国がロシアの戦争犯罪を非難しているという点だ。ひょっとしたら、国連にもまだ希望があるかもしれない。