息子に成りすましていたいわくつきの詐欺師
息子の名を騙るこの青年は何者なのか?
“帰宅”から5カ月の間、バークレー家で同居していたこの少年は、いわくつきのフランス人の詐欺師、フレデリック・ピエール・ブルダン(当時23歳)であることが判明した。
インターポールの指名手配者であるブルダンが行方不明の子供に扮したのはこれが初めてのことではなかった。ブルダンは反省して成りすまし詐欺を止めるまでの間に、500人以上の身元を偽装したといわれている。華奢な体型で童顔のブルダンは歳よりもずいぶん幼く見られる人物であった。
少年(実際には青年)がブルダンであることが判明した後、FBI(米連邦捜査局)は最もニコラスを知る家族がなぜ見抜けなかったのかを不審に思ったが、諦めていた息子が戻ってきたことに喜ぶあまり両親は盲目的になっていたとしても仕方のないことであった。
それにしてもニコラスのことを詳しく調べて身体に同じタトゥーまで彫って偽装したブルダンだが、そこまでしていったい何を目論んでいたのだろうか。
ここまで手の込んだ成りすましを画策する以上は、当然ながら家族の財産や金品の窃盗、収奪などが目的のようにも思われたのだが、ブルダンに尋問を繰り返してみると意外にもそれほど悪質な意図はないようであった。両親に問題があったため祖父母に育てられ最終的には家出をしたブルダンは、親に甘えることができなかった幼少期を埋め合わせたいという願望があり、そこで行方不明の子供に偽装し、その家庭に入り込むことを思いついたようであった。
ブルダンは6年の実刑を言い渡されたが、逮捕後にはバークレー家が悩みの種であった不良少年のニコラスを殺害していたのだと語り、自分が登場したことは殺害を隠蔽できる願ってもない出来事だったのだという趣旨の発言を行っていたようである。
ともあれニコラスの失踪の謎はますます深まり、さらに絶望的になったことは否定できないのだろう。ちなみにこの事件は2012年に『The Imposter』というタイトルでドキュメンタリー映画になっている。もしニコラスが今も生きていれば42歳である。万が一にもこの事件に新たな展開が見られることがあるのか気に留めておいてもよいのだろう。
参考:「History101」、ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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