そこで、県連会長の高市早苗経済安保相が荒井に意向打診というよりは、勇退勧告に近いことをしたようだ。
そして、総務大臣時代の旧自治省業務担当の秘書官で、岐阜県副知事も経験した平木の背を押して、県庁で出馬記者会見をした。自民党県連での議論はまとまらなかったが、いちおう会長一任になったので、高市は大勢は平木だとして走り出した。
それに怒ったのが荒井で、断固、出馬するということになった。各種世論調査では山下が5%ほど平木をリードし、荒井の形勢は良くないようだ。となると、荒井支持者が平木に流れるなら互角ということになるが、なかなかそうならない。
山下については、生駒市長時代に、外国人の政治参加に積極的だったということで、自民というのは一部ではそれを問題にする向きもある。
いずれにせよ、知事公選になった最初の野村萬作は、地元出身でなかったこともハンデになって、内務官僚の奥田良三に再選を阻まれたが、その後は、柿本善也(1991年)、柿本善也(1991年)、荒井正吾(2007年)と禅譲でほとんど無風で推移したのが、今回は現職の敗北ということになりそうだ。
徳島県知事選挙/劣化しゆく「阿波戦争」の行く末は『Gの系譜(2)~歴史からひもとく注目の知事選~』 選挙ドットコム
今回の知事選には、無所属新顔で前参院議員の三木亨(55)、共産党の新顔で党県書記長の古田元則(75)、無所属新顔で前衆院議員の後藤田正純(53)、無所属現職の飯泉嘉門(62)の計4人が立候補を届け出た。
飯泉が多選批判を受けて、前回も危うかったのだから、今回は交代すると受け取られていた。
後藤田は市町村長選挙などでここ数年独自の行動をしすぎて県政の混乱を招いたと見られている。2016年の徳島市長選挙では、四国放送アナウンサーの遠藤彰良を推して当選させたものの、強引な姿勢が批判を浴びた。2020年の選挙では、自民党徳島県連会長の山口俊一代議士や福山守代議士が支援する内藤佐和子に敗れた。このため前回の総選挙では自民党県連から非公認の申し入れが党本部にあった。
それでも現職優先を原則とする党本部は、後藤田を公認したが、小選挙区では敗北し比例で復活当選した。しかも、その議席を放棄し、香川県出身の候補者が繰り上げ当選するのだから批判を受けるのは当然だ。
三木は2007年に県議となり、2013年の参議院選挙で徳島選挙区から当選。2019年には徳島県選挙区が高知県選挙区と合区となったため、比例代表の特定枠の1位に三木が指名され当選していた。今回の立候補は任期を2年以上、残して議席を放棄し、北海道出身の候補者に議席を譲ることになった。
徳島は一気に4人の国会議員のうち2人を失ったことになり、かといって飯泉の出馬経緯もパッとしたものでなく、「阿波戦争の再発というが、以前の戦争にはしっかりした地元の発展を願う政策論争が根底にあったが今回はそれもない」と古い自民党有力者は嘆く。
現職の飯泉は、全国知事会会長などになってそちらの仕事に情熱が行ってしまい、地元が疎かになったと思っている人は多い。ただ、後藤田や三木が当選したら三期くらいは継続しかしかねないが、飯泉さんなら当選しても次は出ないだろうから、一番ベターだという人もある。
ただし、世論調査では後藤田がいまのところリードしている。やはりイケメンなんで浮動票はいちばんとれそうだ。今回の統一地方選挙では、どうもこれまでより、見かけがかなり重視される流れがある。
あとは、ホステスとの不倫疑惑もあってか前回の総選挙で応援に現れなかった夫人の女優・水野真紀が最終日に登場したら勝負ありかという人もいる。
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