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コロナワクチンによる流産の可能性について宮沢氏がネットメディアで解説していました。どのような理屈で流産が引き起こされる可能性があるのかについては宮沢氏の解説をご覧ください。なお、これは可能性の話であって、実際に流産が生じるかどうかは不明です。
私が興味を持ったのは次の箇所です。
それは統計では表れないでしょう。なぜかというと妊娠そのものが免疫学的にはトリッキーな現象であって人の自然流産率はとても高いからです。
もし、ワクチン接種が原因で100人に1人が流産したとしても、統計学的には 有意な差にはなりません。たとえ1パーセントの妊婦がワクチンで流産しても、自然流産の正常範囲内なのです。
これを、別の言い方をすれば、コロナワクチンによる流産の発生率が、100万人接種で10,000件(確率1%)という非常に高い確率であったとしても、コホート研究で接種群の流産の発生率と未接種群のそれを比較検定した場合、有意差は認められないという話になります。
本当にそうなのか思考実験をしてみることにしました。
ワクチン接種者の妊婦10,000人、未接種の妊婦10,000人でコホート研究を開始したとします。偶発的な流産の確率は約15%です。したがって、未接種群の場合、流産有りが1,500人、流産無しが8,500人となります。接種群の場合は、ワクチンによる発生率を10,000件/100万人接種とした場合、偶発的流産にワクチンによる流産が加算され流産有りが1,600人、流産無しが8,400人となります。
この条件でカイ二乗検定で検定しますとp値0.051となり「有意差なし」となります(厳密に言えば、接種群の発生率と未接種群のそれとに差があるかどうかは不明となります)。
つまり、10,000件/100万人接種という非常に高い発生率であっても「有意差なし」となってしまうのです。したがって、「コホート研究において有意差を認めなかったから、ワクチンを接種しても流産を心配する必要はない」とする主張は科学的とは言えません。別の言い方をすると、コホート研究でコロナワクチンにおいての流産の安全性を示すことは 基本的に不可能と言うことです。つまり、これは悪魔の証明なのです。
以前の帯状疱疹の論考で指摘しましたが、有害事象の本来の発生率が高めの時は、コホート研究では有意差が生じにくいのです。特に流産のように発生率が15%と極めて高率の場合は、コホート研究は全く役にたちません。これはコホート研究の弱点と言えます。その結果を解釈する時には、その限界を理解したうえで解釈することが求められます。