1月時点のカナダのオフィス空室率は全国平均で17%を超え、過去最悪です。アメリカも同様で2月の時点で全国平均で空室率は16.5%です。IT企業が多いサンフランシスコが19.2%、シカゴも19.2%、アトランタが20.5%、NYマンハッタンで16.0%となっています。ですが、これはあくまでも平均であり、古い建物はガラガラ、極端な話、単なるコンクリートの塊ということもあるのです。

ここで昨今の金融不安がこれに輪をかけます。REITは概ね5割を借り入れ、5割が投資家の資金で運営します。すると5割の借り入れのステータスが重要になってきます。物価上昇と金利の上昇で運営コストは大幅に上がっています。テナントの撤退も続きます。これは何を意味するか、といえば単に投資家の配当金が下がるだけではなく、借金の返済がままならなくなるREITの手持ち物件が出るということです。

商業物件を扱うREITには出口という発想がかつてなかったはずです。長く持っていればむしろ不動産の価値が上がってREITの価値が上がるぐらいだったと思います。しかし、これは間違いなのです。不動産の潜在的価値の変化と賃貸業とは切り離して考える必要があるのです。空き箱をいくら持っていてもお金は入ってこないのです。BSとPLの違いとでも言いましょうか?これは分かっていたはずですが、新しい視点かもしれません。

北米では一部のREITに大手銀行が融資条件で厳しい見直しを突き付けているという話も聞こえてきます。

冒頭、私が自社のオフィスを作る計画だと申し上げたもう一つの理由はオフィスは直接的にマネーを生まないということです。事業の収益は現場で生まれるのです。オフィスはそれを補完する役目なのにそこで働く人が一番良い場所にいて偉そうにしているのはおかしいだろう、と現場の人は内心思っているのです。だけど、その理不尽が崩せなかったのが今までの常識なのです。これが壊れる時が来たらそれは世の中に衝撃が走るでしょう、現場の逆襲だと。

もちろん、ある日突然、崩壊することはありません。が、オフィス需要に対する目線は時と共に明らかに変わっていく、その中で高層のピカピカの建物はどうやって立ち位置を変えることができるのか、私は心配性と言われるかもしれませんが、不安感を隠せないのであります。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年3月31日の記事より転載させていただきました。