エアレースパイロットの室屋義秀選手らが、新たなエアレース「AIR RACE X」を企画、2023年3月28日に福島市のふくしまスカイパークにて、コンセプト発表会を開催しました。

発表会には室屋選手のほか、レッドブル・エアレースで活躍したマット・ホール選手、ピート・マクロード選手もオンラインで参加。リアル空間でのレースだけでなく、ARを活用したデジタルでのレース開催構想も明らかにされました。

2019年をもって、惜しまれつつシリーズが終了したレッドブル・エアレース。そのレガシーを受け継ぐ新しい「エアレース世界選手権」が2022年開幕を目指して準備が進められていましたが、新型コロナウイルス禍、そして世界の情勢不安により、開催の延期が発表されて現在に至ります。

初戦は2023年10月予定 エアレースパイロット室屋義秀「AIR RACE X」計画発表
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

発表会に参加した3人は、同じ2009年にレッドブル・エアレースの世界に飛び込んだ「2009年組(Class of 2009)」の同期生。普段から密に連絡を取り合う仲ということもあり、話し合いを重ねてきたといいます。

■ AIR RACE X構想について

今回発表された「AIR RACE X」は、誰かが用意してくれるレース開催を待つだけでなく、パイロットの側からアクションを起こしていきたい、というところからスタートしているとのこと。開幕の2年ほど前からレース参戦の準備を進めていた室屋選手は、開催キャンセルの知らせを受け「力が抜ける瞬間でした」と語りました。

初戦は2023年10月予定 エアレースパイロット室屋義秀「AIR RACE X」計画発表
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

その気持ちはマット・ホール選手や、ピート・マクロード選手も同様。特に新しいエアレース世界選手権において、2010年以来となる地元オーストラリア開催に尽力してきたホール選手にとっては、とても落胆する出来事だったようです。

初戦は2023年10月予定 エアレースパイロット室屋義秀「AIR RACE X」計画発表
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

しかし、自分のキャリアを振り返ると、レッドブル・エアレース参戦時に多くのレジェンドパイロットに導かれたことを思い出した、とホール選手。そこで、エアロバティックパイロットのピーター・ベゼネイさんらが「レッドブル・エアレース」を作り上げたように、新たなエアレースを立ち上げることにしたのだといいます。

マクロード選手は「レッドブル・エアレースが終わってからの4年間、寂しい気持ちを抱えていた」といいます。「アスリートとして真剣勝負をしたいと欲していた」とも語り、今回の「AIR RACE X」に参画することを決めたのだそうです。

初戦は2023年10月予定 エアレースパイロット室屋義秀「AIR RACE X」計画発表
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

3人の役割として、ホール選手は2010年のカナダ・ウィンザー大会で機体が水面に接触するアクシデントを経験したことに言及しながら、レースでの安全面整備に興味があると発言。また次世代パイロットの育成に力を入れている(女性や、オーストラリア空軍時代の後輩など)こともあり、選手育成も視野に入れていると語りました。

マクロード選手は、まず競技者として「勝つ」ことと語り、次世代のパイロットが参戦してきた時に、目標になるような存在でありたい、と話しました。2009年組の中で最年少ということもあり、後進育成に触れたホール選手や室屋選手に対し「彼らが育てたパイロットとも勝負したいね」と語る場面も。

■ 「リアル」と「デジタル」2つのレースフォーマット

まだ細部は決まっていないものの、レースフォーマットについては、基本的にレッドブル・エアレースを踏襲するとのこと。「AIR RACE X」で特徴的なのは、実際の目の前でレースが行われる「リアルラウンド」と、AR技術を活用してeスポーツ的に楽しめる「デジタルラウンド」という2形態のイベントが存在することです。

初戦は2023年10月予定 エアレースパイロット室屋義秀「AIR RACE X」計画発表
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)
初戦は2023年10月予定 エアレースパイロット室屋義秀「AIR RACE X」計画発表
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

デジタルラウンドは、まだ1か所の会場でレースイベントを開催するには難しい状況も考慮に入れた開催形態。それぞれ離れた場所にいるレース機が同じレイアウトのコースを飛び、その飛行データを集めて勝負を決するというもので、ARを用いて実際の風景にレース機の飛行を重ねて観戦することを可能にするとのこと。

初戦は2023年10月予定 エアレースパイロット室屋義秀「AIR RACE X」計画発表
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

個々のパイロットは離れた場所で飛ぶため、気象条件がイーブンになるとは限りません。そこで、ある一定の期間を設定し、タイムトライアルを重ねたベストタイムをレースデータに使用するという構想で 、最後の数日間はタイムのランキングを発表せず、より競技性を高める工夫もするといいます。

初戦は2023年10月予定 エアレースパイロット室屋義秀「AIR RACE X」計画発表
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

実際に飛行する姿も観戦できるようにするとのことなので、レースイベントが世界各国で同時多発的に展開されるようになるのかもしれません。その土地ごとに特色あるサイドイベントも開催されそうです。

初戦は2023年10月予定 エアレースパイロット室屋義秀「AIR RACE X」計画発表
(画像=『おたくま経済新聞』より引用)

ARを活用すれば、これまで飛行許可が下りなかった市街地を舞台に、建物の間を飛び回るレースも可能となります。室屋選手からは、この体験を「5次元のモータースポーツ」と位置付け、レースイベントを45分程度の番組にして、ネットを通じて多くの人が視聴できるようにしたいとの構想も語られました。