英国では、物価の高騰がまだまだ続いている。インフレ率は今年2月に10.4%を記録し、年末にかけて4%程度まで下がると英中央銀行は予測しているものの、小売店の棚に置かれた食品や生活用品の価格は上がる一方だ。
筆者自身も、先日光熱費の請求書をもらって、何かの間違いではないかと思うほどの高額に驚いた。1月からは標準的な家庭の年間電気・ガス料金の上限が過去最高の4279ポンド(約67万7700円)になっていたのである。前回10月の上限3549ポンドを更新し、政府の「エネルギー価格保証」の支援が入っても、生活費への圧迫が増している。
例えば、筆者の家庭は2人暮らしだが、数年間、光熱費は毎月約1万5000円だった。ある時から急に上がって2万円に。現在は約4万円だが、政府のエネルギー価格保証の支援金が1万円ほど出るので、支払うのは3万円である。卵はかつて12個入りで約350円。今は、同じスーパーに行くと、6個入りで400円である。
こうしたなか、「タイムズ」紙(電子版2月1日付)が衝撃的な記事を報道した。英国の電力供給最大手ブリティッシュ・ガスが、光熱費が払えなくなった家庭に借金取立人を送り、鍵をこじ開けて侵入させ、前払いメーター(Prepayment Meter)を強制的に取り付けていた。このメーターが設置された家庭は光熱費を滞納すると電気やガスの供給が自動的に止まってしまう。
「タイムズ」紙の記者は取り立て代行企業アルバト社の一員として潜入取材をしていた。3人の子どもを育てるシングル・ファーザーの家庭のドアの鍵をこじ開ける作業が行われていたとき、アルバトの取立人は「わくわくする。たまらないね」と記者に話していた。たとえ滞納していたとしても、住んでいる人が不在中に家に侵入し、強制取り付けとは、ずいぶんと手荒だ。

ブリティッシュ・ガスの営業車 Wikipediaより