国際刑事裁判所(ICC、本部ハーグ)が今月17日、ロシアのプーチン大統領に戦争犯罪の容疑で逮捕状を出して以来、ICC加盟国の間では「どの国がプーチン氏を逮捕するか」で囁きが聞かれる。ICC加盟国でロシアに地理的に近いハンガリーとオーストリア両国では既に「逮捕する」、「いや逮捕しない」といった反応が聞かれるのだ。

習近平国家主席と共に共同声明を発表するプーチン大統領(2023年3月21日、クレムリン公式サイトから)

中欧のオーストリアとハンガリー両国は一時期、オーストリア・ハンガリー帝国を築いた時代があったが、帝国が崩壊し、共和国になって以来、両国は別々の道を歩み出した。ハンガリーは第2次世界大戦後、ソ連共産党政権の衛星国家として共産国となった一方、オーストリアはナチス・ドイツによって併合された後、終戦を迎え、10年間の4カ国の統治時代を経て中立国として再独立を獲得していった。

オーストリアは1995年1月に欧州連合(EU)に加盟し、ハンガリーは冷戦終焉後、民主国家として歩みだし、2004年5月にオーストリアより9年遅れでEUに加盟し、それに先立ち、1999年3月には北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、文字通り西側陣営に統合していった。オーストリアとハンガリー両国での違いは前者が中立国を国是とする一方、後者はNATO加盟国でもあることだ。

ロシア軍が2022年2月24日、ウクライナに侵攻して以来、対ロシア政策でオーストリアとハンガリーの間で微妙な違いがでてきている。オーストリアはロシアのプーチン大統領のウクライナ侵攻を非難し、キーウに対しては人道支援を実施している。一方、同じEU加盟国のハンガリーはウクライナ侵攻を非難する一方、対ロシア制裁には一定の距離を置いてきた。