「やらねばならぬこと・やるべきこと」の要求から逃れ、2人が向かうのは遺跡探しの冒険だ。
金属探知機を使って野原で探査作業を行なった後、木の根元に腰を下ろし、他愛ない冗談を言いながら持参のランチを食べる。そよ風が吹いて草木が揺れる。鳥の鳴き声が聞こえてくる。
2人は「退屈極まりない」クラブ仲間と「収穫」を比較し合い、パブに行ってビールを飲む。仲間も仲間の収穫も「たいしたことない」が、自分たちだって実ははたから見たら「退屈極まりない、たいしたことがない」人間だということを知っている。
「ディテクトリスト」はじわじわとファン層を増やし、クリスマス特別番組(2015年)、シリーズ3(2017年)まで続いた。昨年末にもクリスマス特番が放送された。
社会的地位、おカネ、職など世間的基準からすれば「持たざる者」にされてしまいそうなアンディとランス。絶対にクルーニーやクルーズにはなれない。しかし、マッチョさからは縁遠い2人の姿が多くの男性たちの共感を呼んだ。「男性であることや男性同士の絆をこれほど優しく描いたドラマを見たことがない」とタイムズ紙の記者は評した(2020年3月3日付)。
才人クルックの発案で始まったドラマの企画・脚本・監督・主演を担当したのは、アンディ役のマッケンジー・クルック(51歳)。BBCの大ヒットコメディ「オフィス」(2001-03年)の軍事オタクの会社員役で著名になり、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズでは義眼の海賊ラゲッティを演じた。細身・大きな目が特徴的なクルックは、演技というよりもその風貌で観客に忘れられない印象を残す。筆者もそんな観客の一人だったが、さりげなさに深い意味を込めるこんなドラマを生み出すことができる才人でもあったことを知った。
俳優が脚本・監督をするドラマは、何気ない台詞や表情を見せる場面が入り、素晴らしいと筆者は常々思ってきたが、まさにこのドラマがそうだった。
ランス役は小柄の性格俳優として知られるトビー・ジョーンズ(56歳)。父は俳優で、兄弟にも俳優や映画監督がいる芸能一家の出身だ。数々の映画、テレビ、ラジオドラマなどに出演し、2018年には「ディテクトリスト」で英アカデミー賞テレビ部門のコメディドラマ男優賞を受賞。20年、チェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」で主演し、ローレンス・オリビエ賞にノミネートされた実力演技派だ。
ラジオドラマにもよく出演している。この人も、かなりの才人と言えるだろう。
今後も「ディテクトリスト」は続くのだろうか?「多分もうない。だが・・・」とクルック(「ラジオタイムズ」の記事、2022年年末・新年号)。筆者は、テレビか映画でコンビが復活してほしいと願っているのだが。
(「GALAC」(3月号)に掲載された、筆者コラムに補足しました)
編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2023年3月24日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。