ウイグルを含むテュルク系民族の母なる大地であった「東トルキスタン」は18世紀、戦いに敗れ、清朝の版図に入った。その後、紆余曲折を経てこの領土は中華人民共和国に受け継がれることとなり、1955年に「新疆ウイグル自治区」が設置された。

新疆とは中国側の呼称で「新たに支配された土地」の意味だ。今日までに漢民族が大量に流入し、その人口の割合は1950年の6%から、現在では60%以上になった。

さらに、中国の食糧生産基地となっており、耕地面積ではウイグルは中国で最大になっている。またエネルギーおよび鉱物資源の生産の本拠地にもなっている。これに加えて、共産党政府の核開発の基地となり、47回に及ぶ原水爆実験がロプノールで実施された。核ミサイルなどの軍事基地にもなっている。

このように、ウイグルは中国経済と国防の生命線となっている。しかしウイグル人は「宝地」と呼ばれるこの自らの大地において、漢族との経済格差は広まる一方である。ウイグルの資源は、中国にどのように収奪されてきたのだろうか。

カシュガル旧市街の様子double_p/iStock

ウイグルの豊かな資源

ウイグルは資源が豊富だ。

1997年3月24日付の日本経済新聞によると、新疆政府経済技術協力弁公室は以下のようにウイグルのエネルギー賦存状況をまとめている。

ウイグル自治区の鉱物資源は6兆元(1元=19円)に達する。 石油埋蔵量は400億tで、中国の陸上石油量の30%以上である。 天然ガスは13兆700億m3で、中国全土の天然ガス量の34%である。 ・石炭は2兆1900tで、中国全土石炭資源量の40%を占めている。

今日までに、ウイグルで発見された鉱山資源は138種類あり、その内6種類は中国において埋蔵量が首位である。更に、その他96種類の鉱山資源が地下で発掘されるのを待っているという。

アルタイ山の金鉱山、ホータンの上質な玉(ぎょく)は有名だ。

耕地面積は全国で首位であり、綿、穀物、肉、果物が豊富に産出される。特産品としては漢方薬に用いる甘草や、ラベンダーの生産量が中国でトップである。

光、熱、風などの自然資源も豊富だ。ウイグルは乾燥地域なので水が少ないと思われるかかもしれないが、実は、地下水源と雪解け水が豊富なのだ。

これを活かして「白金」と呼ばれる新疆綿、「紅金」と呼ばれるトマトが栽培される。これに「黒金」と呼ばれる石油、石炭をはじめとする鉱物と合わせて、宝の土地「宝地」と呼ばれてきた。

このようにウイグルは資源が豊富であり、「中国経済の長期的な発展を支える生命線」とされてきた。

しかしその支配権は、中央軍事委員会と解放軍の新疆生産建設兵団に優先的に与えられている。

中国軍事委員会によるウイグルの資源強奪

ウイグルの石油、天然ガス、レアメタル、レアアース、ウランなど、国防上重要な戦略物資は、中央軍事委員会の管轄下にある。

その全面的支配下にある石油管理局と鉱務局が開発・管理・生産をし、北京に本社を構える中央国有企業であるペトロチャイナやシノペックなどが直轄下に置かれている。

新疆ウイグル自治区政府と、解放軍傘下の新疆生産建設兵団でさえ、これらの開発は許されていない。