ストレスが高いほど、酪酸菌などが減少

一方、腸内細菌については、測定の前日または当日に採取した便から分析したところ、心理社会的ストレスに関連する脳活動が高い人(ストレスを感じやすい人)ほど、腸内細菌の中で大腸菌などがふくまれるProteobacteriaのグループの占有率が有意に高く、酪酸菌などがふくまれるFirmicutesのグループの占有率が有意に低いことが分かりました。

この傾向は、ストレスに対して脆弱であるうつ病患者の腸内細菌のバランスと類似しているとのこと。

これらの結果から、心理社会的ストレスと腸内細菌の間に関連があり、心理社会的ストレスを感じやすい人ほど、うつ病患者と腸内細菌のバランスが部分的に似ている可能性が示唆されました。

腸内細菌の研究を通じてストレス関連の疾患予防を

心理社会的ストレスは、2019年以降新型コロナウイルス感染症の拡大により増加傾向にあります。

ストレスの慢性化はうつ病や不安障害などにつながることが知られていますが、ストレスとの関連が特に強いうつ病は年々増加しているものの治療の効果が現れにくく、予防的観点からのアプローチが重要であると考えられています。

ストレスを感じているときに腹痛など胃腸の不調を感じやすい人が多いように、脳と腸と腸内細菌はお互いに関係が強く、心理社会的ストレスに影響を及ぼすことが知られています。

しかし、ストレスに関わる脳機能と腸内細菌に関する研究は、うつ病患者を対象としたものが多く、健常者についてはあまり知られていませんでした。

しかし健康な人の間でもストレスの感じ方には個人差があることから、ファンケルは健常者におけるストレスと脳と腸内細菌の関係を検討することは、ストレスに関連のある疾患予防につながると考えました。

そこで本研究にて、うつ病との関連が強い心理社会的ストレスと、それに関わる脳活動について、健康な男性を対象に前頭葉における心理社会的ストレス反応と腸内細菌の関係を検討するに至ったとのことです。

なお、この研究は論文としてまとめられ、国際学術誌“Neurobiology of Stress”に掲載されました。

ファンケルでは、今後もこれらの成果を生かした新たなサービスや製品開発につながる研究を続けていくとのことです。

(文・Motohashi K.)