レガシーシステム(現場のシステム)とは?

レガシーシステムとは、年々加速するIT技術が広く普及している現在でも、旧来型のIT技術を基盤として構築されているシステムを指します。ITベンダーの独自技術により設計・構築されたメインフレーム(汎用コンピュータ)がその代表例です。国の機関や金融機関など高い信頼性・安定性が求められるシステムでは、いまだに数多くメインフレームが稼働しています。

1980年代、日本企業は、メインフレームを核としたIT化に取り組んできました。その特徴は、部分最適でのシステム構築です。パソコンの無かった時代からのIT化でしたので、WindowsやUNIX、Linuxなどのクライアント/サーバシステムやWeb系などのオープン技術など時代時代のIT技術に合わせたシステム構築が行われました。また、事業部門制を背景とした現場ごとの情報システム部門が部門(現場)の声に基づいてIT化に取り組んできました。

これらのシステムは、ビジネス環境の変化に伴い、改修や機能追加などを繰り返し長年に渡り使い続けられ、企業全体で見た場合サイロ状態となっています。
今後は、新たなIT技術との連携、ハードやソフトのサポート打ち切りなどにより、どこかの時点で抜本的なシステム再構築の取り組みが求められています。

日本企業がSAP導入に苦しむ原因・背景とは?

日本企業がERPを代表とするSAPの導入に苦労する背景について解説します。

日本におけるSAP導入の課題

有力なITベンダーは、2000年代後半、自社の基幹管理システム(受発注管理)をSAP CRM(顧客管理)を中核とした基幹システムに再構築しました。旧システムは稼働から20年超を超え、1,000を超えるインターフェイスと数十の周辺システムなどまさにレガシーシステムそのものでした。再構築には2年を要し、多額の費用を要しましたが、SAPの導入はCRM(顧客管理)にとどまり、生産管理、財務会計など他の基幹業務の刷新には至りませんでした。長期化と高コスト化で会計など一つの業務だけSAPにして力尽きてしまう事例は少なくありません。
再構築プロジェクトの長期化や費用の増加は、ERPへのアドオンが原因です。ERPのアドオンはベースとなるERPの機能やシステムは変更しないで、導入企業にとって必要な機能を開発し追加することを意味します。

なぜ日本企業ではアドオンが必要なのか

ERPの導入は、あらかじめ設定されている業務プロセスや業務フローなどに自社の業務プロセスを合わせることで、構築期間と導入コストが大幅に削減できます。リファレンスモデルに合わせた業務改革・標準化がERP導入の前提です。

日本企業の特徴の一つは、日々の製品・サービス品質向上やQC活動に取り組む強い現場力と言われています。グローバルスタンダードといわれる業務プロセスを自社に取り入れることは、現場が長年練り上げてきた業務プロセスを否定することになります。

そのため、現場の強い抵抗にあい、結果として、アドオンにより、旧来のシステムの延長線上に基幹システムが再構築されてしまう事例が多くあります。

「経営者のためのシステム」を目指したはずが、「現場のためのシステム」になってしまうのです。