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デ・バーゼルに刻まれた海上帝国の栄光
アールデコの華やかな装飾

デ・バーゼルに刻まれた海上帝国の栄光

アムステルダムのレトロな別世界「スタッズアルキーフ」
(画像=『たびこふれ』より引用)

デ・バーゼルには、海上帝国オランダの歴史が刻まれています。まずは、入口の「NEDERLANDSCHE HANDELMAATSCHAPPIJ(オランダ貿易会社)」 の館銘板。その左右には女性の像があります(上写真)。

両手を開いて前に向け、目を開けてる右側の像が「ヨーロッパ大陸」、両手を胸の前でクロスさせ、目を閉じている左側の像が「アジア大陸」を表しています。「開かれたヨーロッパ」と「閉じたアジア」という二項対立の表象には、ヨーロッパ中心主義の価値観が反映されています。

19世紀はヨーロッパ列強がこぞってアジアを侵略した時代です。「先進的なヨーロッパ」に対する「遅れたアジア」など、ヨーロッパ人たちは自らの優位性を可視化させるべく、偏見にもとづいたオリエント像をつくりあげていました。

アムステルダムのレトロな別世界「スタッズアルキーフ」
(画像=『たびこふれ』より引用)

建物の上部には、「オランダ東インド会社」の功績を記念して、3人のオランダ領東インド総督の彫刻が据えられています(上写真)。

左から順に17世紀の総督ヤン・ピータースゾーン・クーン、19世紀の総督ヘルマン・ウィレム・デンデルス、20世紀の総督ヨハネス・ファン・ヒューツで、時代ごとの服装も忠実に表現されています。

アムステルダムのレトロな別世界「スタッズアルキーフ」
(画像=『たびこふれ』より引用)

北東と南東の角には、『海運』と『貿易と産業』の像があります(上写真)。オランダ人彫刻家ランベルトゥス・ザイル(1866‑1947)の作品で、エジプト美術のような不動のポーズが美しい彫刻です。2mほどの高さにあり、近くから見上げると迫力があります。

アムステルダムのレトロな別世界「スタッズアルキーフ」
(画像=『たびこふれ』より引用)

1964年になると「オランダ貿易会社」は、農林金庫と経営統合して「オランダ総合銀行」になりました。デ・バーゼルの南側には「SAFE DEPOSIT(貸金庫)」の入口が残っています。動物の頭の浮き彫りや幾何学的なフレームは、建築家カレル・デ・バーゼルのデザインです。

アールデコの華やかな装飾

スタッズアルキーフは、インテリアデザインの美しさも魅力のひとつです。とくに「宝物室」はレトロな別世界で、訪れるたびに心が高鳴ります。

壁や天井にはアール・デコの模様が描かれ、床や柱はモザイクで装飾されています。街の喧騒から遮断されて、まるでこの場所だけ時間がゆっくり流れているかのような、不思議な気持ちになれる私のお気に入りの場所です。

最も重要な文書が保管されていた、15世紀のキャビネット(上写真)も展示されています。1892年まではアムステルダム旧教会の「鉄の礼拝堂」に置かれ、厚い石壁によって火災から守られていました。

「宝物室」のエントランスには、かつての金庫室を守っていた重厚な金庫扉(上写真)がそのまま使われています。厚さ70cmを超える大扉です。