「熊野古道」という言葉は知っていても実際にどこにあるのか知らないという人もいるだろう。そして、それが一体どういうものなのか、なぜ世界遺産に登録されたのか。

その熊野を知る上で欠かせない場所の一つが和歌山県新宮市にある熊野速玉大社だ。今回はその熊野速玉大社を目的に1泊2日で訪れた旅の記録である。

目次
■熊野三山は世界にも珍しいパワースポット
■熊野速玉大社への正式参拝と、神倉神社

■熊野三山は世界にも珍しいパワースポット

●世界遺産の熊野とは?

熊野古道が「紀伊山地の霊場と参詣道」の一つとして世界遺産に登録されたのは2004年のこと。さらに遡ること約10年、1993年にスペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」が世界遺産に登録されている。

実は数多い世界遺産の中でも「道」の登録は、この2つのみ。かたやキリスト教の聖地ローマ・エルサレムと並ぶ三大巡礼地のサンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう信仰の道、そしてもう一つが真言密教の高野山や修験道の吉野・大峰(奈良県)、神道の熊野三山を結ぶ、神仏習合の参詣道である。

熊野三山「熊野速玉大社」はどこにある? 霊験あらたかな地で人生甦りを実感する旅
(画像=熊野古道・中辺路の小口。、『男の隠れ家デジタル』より引用)

このことからも、熊野古道や紀伊山地の霊場と呼ばれる場所が非常に神聖な場所ということがわかる。

熊野三山は熊野本宮大社(田辺市)、熊野速玉大社(新宮市)、熊野那智大社(那智勝浦町)の総称だ。神道なのに「三社」ではなく「三山」表記が定着していることから、熊野信仰が仏教に親しいことが読み取れる。

そんな事前知識を携えて、和歌山県新宮市、そして熊野速玉大社へ訪れる機会を得た。

●熊野三山の参拝

伊勢の内宮・外宮に参拝の順序があるように熊野三山にも参拝の順番があり、かつて京の都から上皇ら貴族が訪れたルートに起因するという。

そのルートとは、熊野古道の紀伊路から中辺路を通り熊野本宮大社を参拝。その後、熊野川を船で下り河口から熊野速玉大社へ。最後に海沿いを歩き熊野那智大社へ訪れたというもの。

熊野本宮大社 → 熊野速玉大社 → 熊野那智大社

その時々によって違いはあっただろうが、身分の高い人々が熊野詣に訪れたルートはやがて参拝順として一般に浸透していった。

しかし、現在は熊野へ訪れる人々の出発地や移動手段、理由も様々だ。この参拝順を必ず守らなければならないというわけではない。また、それによってご利益が薄まるなどということもない。

大切なのは、心穏やかに気持ちを込めて参拝することだろう。

■熊野速玉大社への正式参拝と、神倉神社

●ついに念願の熊野速玉大社へ

熊野三山「熊野速玉大社」はどこにある? 霊験あらたかな地で人生甦りを実感する旅
(画像=熊野速玉大社。、『男の隠れ家デジタル』より引用)

JR新宮駅から車で約5分、熊野速玉大社へ。鳥居をくぐり進んでいくと御神木の梛(なぎ)が見えてくる。国宝を含む宝物を展示する熊野神宝館を横目に歩けば神門へとたどり着く。

神門の先、正面に神々が鎮座する御宮が並ぶ。授与所で御祈祷の受け付けを行い、案内に従い拝殿へ。祝詞奏上の後、梛の玉串を捧げ、無事に正式参拝を終えることができた。

熊野三山「熊野速玉大社」はどこにある? 霊験あらたかな地で人生甦りを実感する旅
(画像=後鳥羽上皇が29回、後白河上皇は33回も訪れていた。、『男の隠れ家デジタル』より引用)
熊野三山「熊野速玉大社」はどこにある? 霊験あらたかな地で人生甦りを実感する旅
(画像=正式参拝を待つ。、『男の隠れ家デジタル』より引用)
熊野三山「熊野速玉大社」はどこにある? 霊験あらたかな地で人生甦りを実感する旅
(画像=権禰宜・佐藤仁迪さんと熊野観心十界曼荼羅。、『男の隠れ家デジタル』より引用)

権禰宜・佐藤仁迪さんに、熊野速玉大社の成り立ちについて話しを伺う。熊野速玉大社の縁起、仏教と習合した「熊野権現信仰」の起源、全国4000〜5000社を数える熊野神社の創建に寄与した熊野比丘尼と「熊野観心十界曼荼羅」の絵解き…。

いかに熊野が特別な場所なのか、その一端を垣間見ることができた。

●熊野の神々が降り立った聖地・神倉山と神倉神社

熊野三山「熊野速玉大社」はどこにある? 霊験あらたかな地で人生甦りを実感する旅
(画像=538段の参道を登る。、『男の隠れ家デジタル』より引用)

次に訪れたのは神倉神社だ。権現山の中腹に鎮座する古社で、熊野三山で祀られる熊野権現が初めて地上に降り立った場所である。

麓から538段の石段を登り社殿を目指すのだが、これがなかなかの厳しい山道。ゴロゴロと形や大きさの異なる石段は一段一段が高く、登るのも一苦労だ。

熊野三山「熊野速玉大社」はどこにある? 霊験あらたかな地で人生甦りを実感する旅
(画像=神倉神社とゴトビキ岩。、『男の隠れ家デジタル』より引用)
熊野三山「熊野速玉大社」はどこにある? 霊験あらたかな地で人生甦りを実感する旅
(画像=社殿からの眺め。、『男の隠れ家デジタル』より引用)

休み休み登り切った先に現れたのは御神体のゴトビキ岩と新宮市を見渡す絶景。熊野信仰の発祥地、つまりは聖地に立つ特別な体験となった。

毎年2月6日に行われる「御燈祭り」では、この険しい参道を松明を手にした男たちが暗闇の中を駆け降りる姿は圧巻の一言。古の時代から続く祭祀も含め、特別な場所だということがわかる。