国連ウクライナ調査委員会は16日、新しいレポートで「ロシア当局は、ウクライナのさまざまな地域で国際人権法および国際人道法に広範な違反を犯してきた。多くは戦争犯罪に当てはまる。インフラへの無差別攻撃、民間人に対する組織的かつ広範囲にわたる拷問は戦争犯罪にあたる」と強調している。

戦争犯罪には、民間人やエネルギー関連のインフラへの攻撃、故意の殺害、不法な監禁、拷問、レイプ、その他の性的暴力、子どもの不法な移送や強制送還が含まれる。同委員会は「ロシア当局は、彼らの支配下に置かれた地域で、民間人または戦闘に関与していない人々の故意の殺害(戦闘外)を犯してきた。これは、戦争犯罪および生存権の侵害だ」と強調している。

委員会によると、2022年10月10日から続くウクライナのエネルギー関連インフラに対するロシア軍による一連の攻撃は、人道に対する罪に当たる可能性があり、これについてはさらに調査する必要があると述べている。エネルギー関連インフラの混乱により、地域全体と何百万人もの人々が電気や暖房のない期間、特に気温が氷点下になる時期に放置されたという。

委員会は、ウクライナ全土およびロシア連邦の専用施設への監禁は、ロシア当局による特定のカテゴリーの人々に対する一貫した拷問の方法を伴ってきた。元被拘禁者は、「ウクライナ語を話す罰」として、また「ロシア連邦の国歌の歌詞を覚えていない」として殴打された。委員会によると、この拷問のパターンは人道に対する罪にあたるという。

生存者は、深い喪失感とトラウマを委員会と共有するだけでなく、責任者を特定し、責任を負わせることの重要性を強調した。イジウム地域でロシア軍によって父親が処刑されたある男性は、委員会に次のように語った。「今、罪を犯した者がまだ生きているのであれば、最大限の罰を与える必要がある」。

委員会は、すべての違反と犯罪が調査され、責任者が国レベルまたは国際レベルで責任を問われることを推奨している。同報告書を作成するために、委員会は56の地域を訪問し、348人の女性と247人の男性にインタビューした。その調査官は、武器の残骸だけでなく、破壊された場所、墓、拘留と拷問の場所を調査し、多数の文書と報告書を調べた。

プーチン氏がウクライナに軍侵攻して以来、無数の戦争犯罪が行われてきた。ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアはテロ国家だ」と呼んだが、誇張ではない。

参考までに、ロシアの反体制派活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏を描いた長編ドキュメンタリー映画がアカデミー賞を受賞した。プーチン氏の指図でナワリヌイ氏は毒殺される寸前だったが、ドイツで治療を受けて回復した。同氏は健康が戻るとすぐにモスクワに戻った。海外に留まるという考えは同氏には元々なかったのだ。同氏はフィルムの中でも「プーチンを打倒するために運動を続けるのだ」と国内の反体制派に檄を飛ばしていた(「ナワリヌイ事件が示したロシアの顔」2020年9月6日参考)、「ロシア反体制派活動家の『帰国』」2021年1月15日、参考)、「国際社会はナワリヌイ氏に連帯を!」2021年1月25日参考)。

ICCはプーチン氏に逮捕状を出した。国連人権理事会はロシア軍の戦争犯罪を暴露した。そしてナワリヌイ氏は強靭な精神力でプーチン氏と闘いを続けている。プーチン氏を取り巻く状況は厳しくなってきた。

国際司法裁判所 国連HPより

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年3月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。