遅すぎた感はするが、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は17日、ロシアが侵攻したウクライナの占領地からの違法な子供らの連れ去りに関与したとして、戦争犯罪の疑いでプーチン大統領に逮捕状を出した。ロシアはICCに加盟していないから、ICC加盟国を訪問しない限り、プーチン氏への直接の影響は少ないが、「ロシアの大統領に逮捕状」という見出し記事はやはりそれなりの迫力がある。

クリミアとセヴァストポリの社会経済開発に関する会議を主導するプーチン大統領(2023年3月17日、クレムリン公式サイトから)
それにしても、タイミングが良くなかった。中国の習近平国家主席が20日、ロシアを国賓訪問する重要な外交が控えている。中国からウクライナ支援を獲得することが大きな目的だが、その数日前にICCが習主席を迎えるホスト役のプーチン大統領に逮捕状を出したというのだ。クレムリン側は冷静を装っているが、国賓の習近平氏にとっても気分のいい状況ではない。習近平氏は逮捕状が出ている国家元首に最初に会った政治家、という不名誉なことになるからだ。(中国はロシアと同様、ICCに加盟していない)
外交の世界では何事でも最初というのが重宝がられるものだ。逆でもいえることだ。だから、中国側からモスクワ訪問の時期をずらしたいといった打診があったとしても不思議ではない。3期目の最初の外遊先に、どの国家元首が「戦争犯罪人」というレッテルを貼られたプーチン氏を選ぶだろうか。中国は名誉とメンツをロシア人より重んじるのだ。
プーチン氏に厳しい対応をしているのはICCだけではない。国連人権理事会は、ウクライナに関する独立国際調査委員会を設立し、人権の侵害と国際人道法の違反、およびロシア連邦による侵略の文脈で犯された可能性のある関連犯罪を調査してきた。
人権理事会決議49/1に従って提出された本報告書では、ウクライナに関する独立国際調査委員会は主な調査結果と一連の証拠から「ロシア当局が国際人権法に幅広く違反をし、ウクライナの多くの地域とロシア連邦で国際人道法を無視し、故意の殺害、民間人への攻撃、児童の不法監禁、拷問、強姦、強制移送および国外追放した」と結論を下している。また、「民間人への危害を無視して人口密集地域で爆発兵器を使用し、無差別で不均衡な攻撃を行った」と記録している。さらに、委員会は、「ロシア軍の波状攻撃が2022年10月10日以降、ウクライナのエネルギー関連インフラの破壊は、人道に対する罪に相当する」と述べている。