「ネット史上、最大の事件」とも言われている実話をもとに製作された映画『Winny』が、2023年3月10日に公開された。
天才はなぜ警察に潰されたのか。7年に渡る、権力やメディアと戦った男たちの真実に基づく物語、映画『Winny』の魅力を今日は皆さんにお伝えしたい。
Winnyって何をするもの?
読者の皆さんは、そもそも「Winny」とは何かご存じだろうか。Winnyは、2000年代前半に大きな話題となった、ファイル共有ソフトだ。もしかすると、実際に使ったことがあるという方も、中にはいらっしゃるかも知れない。
インターネットを介してWinnyをインストールしているパソコン同士が繋がることで、当時は自分の持っているファイルを公開したり、欲しいファイルの名前をWinny上で検索すればダウンロードすることも出来た。2002年のベータ版公開当時から、匿名性が高いソフトであったことも相まって、Winnyは瞬く間にそのシェアを伸ばしていったのである。
Winnyで共有可能なファイルは、映画やアニメなどの動画から、音源、画像、ゲームなど、ありとあらゆるものが対象だった。しかし、このことが著作権を無視した違法アップロードへと繋がり、次第に社会問題と化していく。Winnyを経由した機密情報や個人情報などの流出も後を絶たず、コンピューター上で予期せぬウイルスの拡散も流行。Winnyは次第に「悪のソフト」としてのレッテルを貼られてしまったのだった。
Winnyを開発した金子勇さんの人生
Winnyを開発したのは、金子勇さんというプログラマーの方である。
Winnyに応用されたPeer to Peerは、現在のブロックチェーンの先駆けとも呼べる技術だったのだが、金子さんはWinnyを開発したことで「著作権法違反幇助」の容疑がかかり、2004年に京都府警に逮捕されてしまう。若く才能あふれる金子さんの逮捕は、「殺人に使われた包丁をつくった職人は逮捕されるのか」ということを、多くの人に考えさせるきっかけとなった。
その後、7年という長い歳月をかけて、金子さんは2011年に無罪を勝ち取ったのだが、2013年に心臓の病で帰らぬ人となってしまう。
映画では「なぜ、一人の天才開発者が日本の国家組織に潰されてしまったのか」ということを軸に、開発者の未来と権利を守るために、権力やメディアと戦った男たちの真実を描いていている。