国民の危機意識と乖離した「反撃能力保有反対論」
日本共産党や日本弁護士連合会などは、「反撃能力」保有に反対している。
主たる反対理由は、
相手国の領域内への攻撃であるから憲法9条の「専守防衛」に違反する 「反撃能力」の保有は必要最小限度を超え憲法9条が禁ずる「戦力」に該当する 先制攻撃の危険性があり反撃を受けて全面戦争になりかねない 日本が攻撃を受けていないのに、集団的自衛権として「反撃能力」を行使すれば、米国の戦争に巻き込まれる 武力に依存せず北東アジアに米・中・ロ・北朝鮮を加えた平和の枠組みを構築するなど、憲法9条に基づく平和外交に徹するべきである
などである。
しかし、日本共産党や日本弁護士連合会の反撃能力保有反対論は、ロシアのウクライナ侵略や中国による「台湾有事」「尖閣有事」の危険性、北朝鮮の弾道ミサイル発射や核開発等に対する危機意識の欠如に由来するものであり、ロシアによるウクライナ侵略後の日本国民の危機意識と大きく乖離している。
共産党などの反撃能力保有反対論に対する根本的批判もともと座して死を待たない「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有と行使は、1956年の鳩山一郎内閣以来「専守防衛」に反せず合憲とされてきたのであり、防衛政策上保有しなかったに過ぎない。
しかし、日本を取り巻く安全保障環境が激変し、ミサイル防衛が機能しなくなれば、国民の命を守るため他に手段がなければ、自衛のために敵のミサイル発射基地等をたたく「反撃能力」の保有と行使は、「専守防衛」に反せず合憲であると解するのが相当である。最高裁判所も憲法9条は国と国民を守るための自衛権を放棄していないと明確に判示しているのである(最大判昭34・12・16砂川事件参照)。
「専守防衛」とは、日本が他国を侵略する「侵略戦争」を否定する概念であり、他国の武力攻撃から国民を守る自衛のための「反撃能力」の保有と行使を否定する概念ではない。のみならず、「反撃能力」は、個別的又は集団的自衛権として国連憲章第51条でも容認されているのである。