突如発生したアメリカ金融市場の激震
2009年リーマンショックを直接的に体験した方々にとってあの悪夢はもう勘弁してほしいと思っています。実際、銀行システムはその後頑強な体質となり、コロナの際にもびくともしませんでした。「コロナショック」が一時的に終わり、強い株価の回復力を見せたのは金融システムの万全さが理由です。それなのにシリコンバレーの人間しか知らないようなSVBフィナンシャルグループ傘下で全米第16位のシリコンバレー銀行の預金流出による取り付け騒ぎが世界中の銀行を震撼させるとは誰が思ったでしょうか?金曜日の東京市場でもメガバンクの株式が3月配当取り期待で上がるところが暴落したのもその理由です。
この銀行はベンチャーキャピタル向け融資が多かったのですが多くの事業者が前途多難になり資金流出が起きていたため、銀行が手持ちの証券、2兆9千億円分程度を売却したことで問題が顕在化。更に3000億円強の増資をしようとしたがこれに失敗というのが顛末です。現在、同行の株式は取引停止、大手銀行による救済合併と政府による救済の2本立てで話が進んでいます。市場は疑心暗鬼で第2のSVB探しが始まっており、預金引き出しによる負の連鎖の可能性がないとはいえません。この項を書いている途中でこの銀行は破綻しました。
ほぼ強制的に破綻させたのは負の連鎖を止める施策だとみています。この週末に更なる対策を打ち出さないとマネーの決壊が生じるきっかけをつくり、それが欧州やアジアなどに伝播すれば盤石だった金融システムが不安感から泥沼に陥ってしまいます。泡沫の銀行の事象とは考えない方が良いでしょう。前項でパウエル氏がそこまで強気になれる理由が懐疑的と申し上げたのは突如降ってわいた問題はパウエル氏の足元で燃え上がるリスクだということであります。

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驚きました。この国交正常化、そしてもっと驚くべきはその仲介をしたのが中国でした。王毅政治局委員はしたたかです。バイデン大統領は地団駄を踏んでいるのでしょうか?イスラム教スンニ派のサウジアラビアとシーア派のイランは歴史的に距離感がありました。局地的な紛争も含め、厳しい関係でしたが、イランの西側諸国による厳しい経済制裁が全く違う展開を生んだ、とも言えます。言い換えれば経済制裁されても抜け道は探せば必ずある、そしてそれを支えるのが中国である、ともいえます。
この中東政策だけを見ればアメリカの完敗です。アメリカ民主党政権が最も不得手とする外交に於いて特にバイデン大統領が苦手な中東で失敗したとすれば外交だけ見ればバイデン氏の芽はもうないに等しいでしょう。問題はここからで、中東がアメリカ軽視となれば原油の輸出にドル以外の通貨を使うことを許容する公算があること、中国がサウジとの関係をより密接にすることで日本などへの原油の安定供給に不安感が出てくること、そしてイスラム圏の存在感が大きくなるということです。
暗躍するのが中国となりますのでアメリカ議会は中国敵視政策をより強化するのでしょう。ただ、アメリカも一方的に喧嘩を売るのではなく、戦略的にもっと切り口を変えていかないと無理だと思います。アメリカは外交的に何をしたいのか、ここが不明瞭なのです。かつてのアメリカのモンロー主義は死んだわけではありません。トランプ氏はモンロー主義的だったし、当時、ジョンボルトン氏は「我々はモンロー主義という言葉を使うことを恐れない」と述べています。これで一番困るのは誰か、といえば日本だという点に気がつけばこのサウジ/イラン国交正常化の意味がより鮮明に理解できるのではないでしょうか?
後記 弊社マリーナの年間契約の更新時期を迎え、今年は顧客に「支払い方法がクレジットカードの場合は3%のサーチャージを頂きます」と申し添えました。効果抜群、9割の人は小切手や振り込みにすると回答がありました。当地ではクレカの売り手負担の費用が増大していることで公共料金の支払いを含め、クレカサーチャージを適用する会社が増えてきています。便利だったクレカが顧客のメリットだけを強調した反動ともいえましょう。クレカカード会社への影響は大きいものになるかも、です。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年3月11日の記事より転載させていただきました。