ハルシュタットの場合、現地の下水処理場での排水検査を実施することで、コロナウイルスの新しい変異株の有無を調査できる。中国旅行者が飛行機内や訪問先で残した痕跡を分析することで、新たなコロナ感染の拡大を未然に防げるというわけだ。

ただ、廃水から新しいコロナ変異株が発見された時、オーストリア国内で既に感染が拡散している状況が考えられる。フライト内の廃水検査を迅速に実施しなければならないが、中国旅行者は他の欧州諸国を訪問した後、陸路でハルシュタット入りするケースが多いことだ。

ハルシュタットの観光担当者は、「中国からの大量の観光客の殺到を回避するために、中国内でのハルシュタットの広告PR活動を縮小した。その浮いた予算を町のインフラ整備や文化プログラムの充実に使っている」という。

観光客が少ない都市の観光担当者が聞いたならば、「贅沢な悩みだ」と言うかもしれないが、ハルシュタット周辺の住民にとって中国人旅行者の殺到は村の風景と静けさを損なうだけではなく、コロナ感染のリスクを高めるダブル・カタストロフィというわけだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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