ロールスロイス・モーター・カーズは2023年3月6日、史上最も精巧なビスポークとして仕立てられた、世界で1台だけの「ファントム・シントピア」を発表した。このビスポーク・モデルは、革新的なオートクチュールのデザイナー、イリス・ヴァン・ヘルペン氏とのコラボレーションにより実現している。
このビスポーク・モデルは、ファントム・エクステンデッドをベースに4年間をかけて作り上げられている。イリス・ヴァン・ヘルペン氏のラグジュアリーなオートクチュールのセンスと、ロールスロイスならではのラグジュアリーさの相乗効果により、従来のラグジュアリーという概念を超越したスペシャル・モデルが誕生した。
なお、ファントム・シントピアという車名は、イリス・ヴァン・ヘルペンが2018年に発表した画期的なコレクションに由来している。このコレクションは、自然界に見られるパターンや形状からアートを発想するバイオミミクリー(生物模倣)の原則に基づいてデザインされ、動くたびに生き生きとした表情を見せる彫刻的な衣服で構成される彼女のコレクションと同様に、ファントム・シントピアは「ウィービング・ウォーター(水のうねり)」というテーマを通して、固体でありながら流体のような動きを見せる、捉えがたい幽玄な美しさを表現することを目指したのだ。
このコラボレーションでは、「ウィービング・ウォーター(水のうねり)」というコンセプトからインスピレーションを得て、流れる水の中にいる感覚をファントムの車内で感じる流体的な没入体験を目指し、自然の力に圧倒されるような究極の体験を創り上げている。
インテリアには、水の流れを表現した立体的なテキスタイルの彫刻を配置し、頭上を飾る「ウィービング・ウォーター」スターライト・ヘッドライナーは、ロールスロイス史上最も精巧なヘッドライナーとなっている。
このヘッドライナーは、1000枚以上の皮革から選び抜かれた傷ひとつない一枚革が使われている。左右対称に正確にカットされた部分から見えるのは、その下にあるシルバーの「リキッド・メタル」テクスチャーだ。イリス・ヴァン・ヘルペンのコレクションで使用されたナイロンの織布でできたこのテクスチャーが、ヘッドライナーに立体感を与えている。
さらに仕上げとして、グラスオーガンジーでつくられた162枚の繊細な花びらがあしらわれている。これは、イリス・ヴァン・ヘルペンのクチュール・チームがグッドウッドまで足を運び、約300時間をかけて創り上げた。また、光ファイバーを用いた995個の輝く「星」のうち、187個は手作業でアートワークの横に配置され、後方から前方に向かって順次点灯することで躍動感を演出。このヘッドライナー全体だけでも、延べ700時間近い作業時間を製作に要している。
車内はまるでギャラリーのようで、ロールスロイスとイリス・ヴァン・ヘルペンのアムステルダム・アトリエのスペシャリストが手作業で製作したアートワークが実現し、85枚の花びらが配されている。そして、ロールスロイスのクルマとして初めて特別な香りを熟練の調香師がビスポークし、キャビン内で真の没入体験が可能になっている。
ヘッドレストには、専用に開発されたフレグランスを放出する機構が内蔵されている。この特許技術は、もともと医薬品の分野で使用されていた革新的なマテリアルを取り入れたもので、適切な微量の香りを放出し、洗練された感覚を長く持続させることができる。開発には2年以上の歳月を要し、どのような環境下でも香りの特徴を維持できるように、高温と低温の環境下での厳しいテストが実施されている。
ロールスロイスはヘリテージに敬意を表し、この比類のないモデルのシートには、運転席には丈夫なレザー、後部座席にはラグジュアリーで心地よい織布が使われていた時代を思い起こさせるインテリアを採用。ファントム・シントピアのフロントシートは、光沢感が際立つマジック・グレーのレザーで仕上げられ、リヤシートは専用に織られたシルクの混じった織布を採用し、夜の水面に映る光のパターンをイメージした独特の模様が施されている。