株式会社イノフィスでは運搬作業など人の手が必要となる業界にアシストスーツを提供しています。今回は、身体的負担で人材不足に苦しむ介護業界でのアシストスーツ活用について同社の国内営業部部長 小山寿弥氏にご寄稿いただきました。
超高齢化社会となる2025年問題まであと2年
2023年に突入し、目前に迫る「2025年問題」。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、超高齢化社会による社会保障費の増大や人材不足など、様々な問題が発生すると予想されています。中でも介護業界の人材不足が課題となっています。
厚生労働省の発表によると、2025年度には約243万人の介護職員が必要だと推測されています。一方、2019年度の介護職員数は211万人と、約32万人不足しています。
さらに、65歳以上の高齢者の人口がピークになる2040年には、約280万人が必要に。約38万人の人材確保が急務となっています。
介護職員の半数が腰痛で離職。それが、介護業界の人材不足につながっている
こうした介護職員の人材確保の一つの壁となっているのが、介護職の身体的負担の大きさです。介助の際に身体を抱えたり、目線をあわせながら会話をするため中腰になったり、ベッドから車いすに移動させる時にかがんだりします。
その際の腰への負担が大きく、慢性的な腰痛に悩んでいる介護職員の方が多くいらっしゃいます。
腰痛は一度発症すると、完治が難しいため、その予防が非常に重要です。介護職員の方は、仕事中は絶えず中腰になることが多いため、緩和しては悪化の繰り返しです。
腰痛が深刻な方は、整骨院に行くこともあります。介護職員の中には、ベッドで腰を休ませるのに時間がかかり、休日がつぶれてしまう方、腰が痛くて介助が行えなくなる方もいると聞きます。経験を積んだスタッフほど、長年の腰への負担が蓄積しており、腰痛の悩みを抱えがちです。
また、治療費や通院、入院した場合の在院期間など、生活に与える影響も大きいものです。
ユーピーアール株式会社が行った調査では、介護職員の46%の方が「腰痛」が原因で離職を考えたことがあると回答。腰痛問題への対策は、2025年問題を前にした喫緊の課題です。
腰の負担軽減の選択肢になっているのがアシストスーツ
こうした腰への負担軽減を解消する選択肢として拡がっているのが、アシストスーツの導入です。アシストスーツとは、モーターによるアシストや人工筋肉等による荷重分散効果により、重量物の持ち上げ・下げ時に身体にかかる負荷を軽減する目的で開発された商品です。
物流、建設、製造、農業、医療、介護など様々な業界で活用されています。人の手による作業が必要な現場での身体負荷を軽減することができます。
東京都世田谷区の特別養護老人ホーム「砧ホーム」では、腰への負担を軽減する、株式会社イノフィスのアシストスーツ「マッスルスーツ」の歴代製品が導入されています。
負荷の少ない介護の実現を目指し、さまざまな福祉用具や介護ロボットについて情報を集めて試してきた中で、選択肢の一つとなったのが「マッスルスーツ」でした。
2017年4月にマッスルスーツの利用を開始。最初は抵抗感のある介護職員さんもいらっしゃったようですが、職員の間で口コミが拡がり、利用者が増加。
導入前は腰痛が原因で仕事を休む人や離職者も多かったそうですが、導入後の約6年間に腰痛を理由に離職した職員さんはゼロだったそうです。
そのほか、「休日に出かけるようになり、自由時間が増えてきた」「腰を気にせず、余裕を持って介助ができる」「職員だけでなく、介助を受ける利用者の方々も安心感を持ってもらえるようになった気がする」と、心にゆとりを持てるようにもなりました。