46歳。妻子アリの男が何を思ったか、自転車に荷物を積んで北海道を旅します。北海道の何もない一本道を、まるで学生の様におじさんが自転車を漕いでいます。で、僕は一体どこまで行くのでしょうか?何となくの方角だけ決めて最終目的地が決まっていない!さあどうなる?
前回までのあらすじ
![アラフィフチャリダーが行く!北海道小旅行【第二夜】](https://cdn.moneytimes.jp/600/374/fwzTAoLmNGnlGUUYxWvPrSSMEwYGnynA/f074974b-b904-4e76-b4f1-620bbf12b736.jpg)
忙しさにカマかけてすっかり運動不足の僕。登山はおろか、普段のお散歩でも息が切れる。
どうにかしないといけない…
持病の影響もあり、メンタル崩壊寸前だったので、思い切って旅に出ることに。
10年前に北海道縦断をした。ノウハウはある。今回はその半分以下の日程だ。不安はない。
前回旅した時はまだ小学生だった息子もいまは専門学生だ。変わらない寝顔にしばしの別れを告げる。
早朝の出発にも拘わらず、見送ってくれた妻に、ほんの少しの申し訳なさを差し出し、ペダルを踏んだ。
交通量の多い国道を抜け、道端に座って休んでいると、どこからか僕を呼ぶ声がする。
きょろきょろ辺りを見ていると…
おじさんの博物館と甘酒
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「こっちだって!」
ようやく見つけた声の主は、二階の窓から手を振っていた。
手招きされたので、自転車を押しながら信号を渡る。
「どっから来たのさ」
お決まりの質問に、旅を始めたばかりの申し訳なさを隠しつつ素直に話すと、「そっか、まあいい。休憩がてら甘酒飲んでいけ。2つ目の信号のとこだから」と言って路地へ入って行ってしまった。
甘酒は好き嫌いがある飲み物だ(僕は米麹の甘酒なら飲める)
しかし、こういう場面で好き嫌いを言うほど野暮なことはない。
遠慮せずに「はい!いただきます」と言うのが礼儀だ。
怪しさ満点。骨董品の数々
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ちょっと迷っておじさんの家に着くと、「さ、入れ入れ」と招き入れてくれた。
おじさんの家の前には狸の置物や、謎の人形がたくさんあり、入口の薄暗さと相まって若干不安がよぎる。
挨拶と共に中に足を踏み入れると、案の定、山の様に骨董品が並んでいた。
骨董品に興味が出るまでもう少し時間がかかる年齢の僕は、それでも「スゴイッスね~」と言いつつご機嫌を取る。
しかし二階に上がるとそのテンションは逆方向に、一気に、最高潮に、跳ね上がる。
レアなフィギュアが並ぶ夢の博物館
階段の壁にはガンダムや仮面ライダー、ヤマトなどのポスターが貼られている。しかも一目でレア品と分かる品。
さらに奥に行くと同じく仮面ライダーやエヴァンゲリオンのフィギアが文字通り所狭しと並んでいる。
そして僕を最も興奮させたのが、合体ロボの超合金。
ロボットアニメ世代の僕が、幼いころ憧れていたおもちゃの数々が、かなりよい保存状態で陳列されていた。
大騒ぎしたい気持ちをグッと抑えてここでも「スゴイッスね~」で留めておいた。
おじさんは「私設の博物館なんだ。誰も見に来ないけど」と少し寂しそうにしていた。
おじさんの甘酒
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「したら甘酒飲んでけ。うまいぞ」というのでご馳走になった。
コップ一杯の甘酒に口をつけた。
おいしい!サラッとしていて、甘酒が好きな人なら、いくらでも飲める味だ。
「なして自転車で旅なんかしてんのさ」
おじさんは僕に対して当然の疑問を投げかけてきた。
この質問はこの先出会う人には必ず聞かれることだろう。
その答えは予め用意している。
「ストレスで気が狂いそうになった。見かねた妻が行って来いと背中を押してくれた」
当たり障りのない、しかし正直な気持ちを話すと
「あんたも苦労したんだな。奥さんもがんばった。なんもしてやれないけどもう一杯飲んでいくか?」
それからまたしばらくお話して、二杯目の甘酒を飲んだところでようやく腰を上げた。
「気ぃ付けれや」
二時間も話し、すっかり心が通ってしまった。
親子ほど年の離れた僕とおじさんは言葉少なに別れを告げる。
「また来ます」
甘酒は飲む点滴と言われている。その栄養は心にも効くらしい。