観光目的で訪れた土地で立ち寄りたい図書館をピックアップする「観光できる図書館シリーズ」。今回は、日本を代表する建築家・デザイナーである隈研吾さんが手掛けたTOYAMA キラリに入っている「富山市立図書館」をご紹介します。
光の差し込む角度まで空間美に取り込んだ「スパイラルボイド(螺旋を描いている吹き抜け)」といった斬新な設計、不規則な向きに並ぶ県産の杉材、華奢なデザインが特徴的なサインなどの洗練された建築デザイン・インテリアデザインは、TOYAMA キラリを訪れた際にはぜひ注目してほしいポイントです。
隈さんが手掛けたTOYAMA キラリの建築についてはもちろん、全国のデザイン好き・インテリア好きにはたまらない細かなポイントも一緒にまとめました。
記事内では、館内に併設の「富山市ガラス美術館」「富山市ガラス美術館ミュージアムショップ」についてもご紹介していきます。富山市ガラス美術館ミュージアムショップでは、富山の作家が制作したガラス細工を中心に、富山土産にぴったりのTOYAMA キラリオリジナルグッズが購入可能です。ミュージアムショップのおすすめアイテムや、ガラス細工に込められたコンセプトについても掘り下げます。
ガラス、路面電車、食文化、街のにぎわい...北陸のいいところがギュッと詰まった富山の魅力を発見できるコンテンツが充実した富山市立図書館を、富山観光のスタート地点として、知的好奇心をくすぐる旅に出かけましょう!
目次
「富山市立図書館(TOYAMA キラリ)」とは
TOYAMA キラリの建築デザインについて
「富山市立図書館(TOYAMA キラリ)」とは
富山市は、交通や商業施設などが近接する「コンパクトシティ」の先進事例として、国内外から注目を集めています。そんな富山市の新たなシンボルとして設計され、2015年8月にオープンしたのが「TOYAMA キラリ」です。
富山第一銀行と共用の玄関ホールから入館でき、2階にはミュージアムショップが入っています。また、2階~6階の南側には「富山市ガラス美術館」が入ります。3階〜5階の北側には「富山市立図書館」が入っており、フロアごとに異なるテーマでゾーニングされています。
3階から5階までは、南側が富山市ガラス美術館、北側が富山市立図書館と大きく2種類のエリアで構成されていて、水平ではなく垂直に空間が繋がる設計がとても新鮮です。初めて訪れると、人によっては少し違和感を感じるかもしれません。しかし、この場所に慣れてくると、図書館と美術館を行き来できることに、面白みや居心地のよさを感じられるでしょう。
TOYAMA キラリへのアクセス方法
富山市立図書館方面に向かうには、富山駅構内の路面電車乗り場から、市内電車「環状線」に乗車します。乗車後、12分ほどで、TOYAMA キラリ最寄りの「グランドプラザ前」に到着します。同じく市内電車の「南富山駅前行き」に乗車し、12分ほどの「西町」で下車する行き方もあります。「グランドプラザ前」「西町」どちらで下車した場合でも、そこから徒歩1分〜2分ほどでTOYAMA キラリにたどり着きます。
市内電車の乗車料金は、一律210円です。車両の後ろ側の扉から乗車し、前側の扉から下車する際に現金または交通系ICカードで支払います。
また、バスで向かう場合は、富山駅前から富山地鉄バスに乗車し、「総曲輪(そうがわ)」または「西町」で下車します。そこから徒歩5分もかからずTOYAMA キラリに到着します。富山駅前から総曲輪・西町までは、片道210円です。
TOYAMA キラリの建築デザインについて
富山市立図書館の建築デザインの大きな特徴は、木材をふんだんに使用した温かみのある内装と、立山の氷の岩脈(がんみゃく)のような外観とのコントラストです。
また、内装の自然光が斜めに突き抜ける「スパイラルボイド」からは、現地でこそわかる強いパワーが感じられます。統一感を持たせながら目的や気分によって選べる種類豊富な閲覧席や、華奢なデザインがハイセンスなサインなど、訪れる人々の心を癒したり好奇心を満たしたりしてくれる仕掛けがいっぱいです。
日本を代表する建築家・デザイナーの隈研吾さんが手掛けたことから「隈研吾建築」として注目を集めるTOYAMA キラリ。まずは、隈さんについて知っていきましょう。
日本を代表する建築家・デザイナー隈研吾さん
隈研吾さんは、日本だけではなく中国やフランスでも建築を手掛けています。彼が設計する建物の数々は、日本古来の素材の特徴を活かしつつ、その土地の文化に溶け込むことで世界的に高い評価を受けています。2021年の東京オリンピックで新国立競技場の設計を担当したことは、彼と彼の建築の人気を不動のものとしました。
TOYAMA キラリは、富山市中心街の歴史に配慮しつつ街のにぎわいを引き込み、街中のリビングのようになっていることから、富山を代表する隈研吾建築であるとともに富山市のシンボルであることは間違いありません。市内で出会える他の隈研吾建築についても、記事の後半でご紹介していきます。
TOYAMA キラリの内装と外観
TOYAMA キラリの建築デザインは、富山県産の杉材をふんだんに使用した温かみがあり開放的な内装が、訪れた人をもてなし感動させます。一方で、外観は、キラキラとしたシルバーカラーのストライプが特徴的。立山の氷の岩脈や、富山のガラス細工をイメージしてデザインされています。開放的なのにどこか包み込むようなぬくもりを感じる内装と、端正でカッコイイ外観とのコントラストに、最初は驚く人も多いはず。
外観の素材には、富山をイメージするガラスとアルミ、かつてこの場所に立っていたデパート「大和 富山店」の雰囲気を引き継ぐ白い御影石(みかげいし)などが使用されています。見る角度や時間帯によって日の当たり方が異なることで、建物のいろいろな表情が楽しめます。ぜひさまざまな角度から観察してみてください。
なお、現在の大和 富山店は、TOYAMA キラリと道を挟んだ向かい側に建ち、営業を行っています。
内装・外観ともに板が縦に、しかし不規則な角度に組み立てられていて、多少のリンク感もあることに気づきました。観察すればするほど、その奥深い建築デザインに興味をそそられます。
吹き抜けのスパイラルボイド
TOYAMA キラリの2階に上がり、天井を見上げると、館内を斜めに貫く吹き抜けの「スパイラルボイド」が目に入ります。「TOYAMA キラリに街の賑わいを引き込み、その流れが立体的に螺旋を描いて突き抜けるように」との想いを込めて、隈研吾さんが設計したスパイラルボイド。開放的なフロアに、屋上から自然光が差し込む様は、どこか神々しくも感じられます。
2階の北東側(ミュージアムショップの角)が、スパイラルボイドのベストショットを撮影できる場所です。訪れた際は、忘れずにこの場所に立ち、富山の街中のエネルギーと光が交わり突き抜ける空間を体感してみてください。
館内の中心を貫くスパイラルボイドは、館内の明るさや開放感にも関与しています。2階のみならず、各フロアから吹き抜けを望むと、館内を行き交う人々のざわめきやたくさんの本が整然と並ぶ様子など、多くの発見があるでしょう。
目的や気分によって選べる閲覧席
富山市立図書館には、さまざまな種類の閲覧席が配置されています。中でもおすすめが、北側の窓際席です。大きな窓からは、天気がよければ美しい立山連峰が見えることも。読書をしたり、街中の人々の営みや路面電車を眺めたりと、窓際席に座っているだけでも楽しめることがいっぱいあります。
広々としたテーブル席や、少し落ち着いた明るさの杉材に囲まれたスペースもあり、目的や気分に合わせてお気に入りの場所を見つけられます。
各フロアにはベンチが多く配置されていて、気になった本を気軽に手にとり、近くの閲覧席で読むこともできます。
洗練されたデザインのサイン
TOYAMA キラリの館内を歩いていると、お手洗いやベビーシートの案内のデザインが、華奢でオシャレなことに気づきました。細いラインと白がベースで洗練されたデザインで、つい写真におさめたくなります。サイン自体は、近付いてみるとなかなかの大きさがあるため、意外にも見やすいです。
薄い色味の木材と、白を基調としたサインとの相性がとてもよく、空間全体の柔らかい雰囲気を作り出すのに一役買っています。斬新な建築デザインだけでなく、インテリアデザインの美しさは、ぜひ注目してほしいポイントです。