もう一つ、住宅は住む人がいないと需要はありません。2022年度の出生者数が80万人を切ったと報じられています。政府は少子化対策といって様々な施策を施そうとしていますが、それは少子化対策ではなく、「子育て対策」なのです。そもそも結婚して子供を作るというその前段の部分が成り立たないケースは日本のみならず、世界の先進国、中進国のトレンドであってそこに目を向けないと少子化対策などできないのです。

日本は70年代半ばから少子化がストレートラインで進んでいます。住宅の第一次購入者層の平均年齢は概ね40歳。ということは82年生まれですから既に減少ラインの突入しています。一方、二次取得者層の平均年齢が概ね55歳なので68年生まれあたりになります。ということはあと6-7年で第二次取得者層もピーク打ちとなり、その頃からいよいよ本格的に日本の住宅市場は冷えてくるとみてよいかと思います。冷えるとは土地の価格が下がります。但し、建物の建設費は下がらないので土地建物の合算額は相殺し合って変わらないという予想をしています。

住宅価格は結局人口が増え、国家の経済力が上昇するところが強いのです。アメリカやカナダが必死に移民政策を続けているのは経済の歯車を回し、優秀な若年層を自国に取り込み、自国内の生産性を高め、住宅も取得してもらうという政策を長年推進しているとも言えます。

日本の場合、移民受け入れは相当の抵抗力がありますが、そもそも外国人も日本に移民する人は少ないのです。(私の言う移民とは永住権です。数年単位の労働許可ではありません。)理由はまだまだ異国人を受け入れる社会的インフラが十分ではないからです。そうなると地方を中心に厳しい経済環境は続くと思います。TSMCが熊本に出来るので地元は湧いているようですが、彼らの計画従業員数は1700人しかいないのです。ラピダスが北海道千歳に同様の投資をしますが、従業員数は同様でしょう。半導体はロボットが作るのです。もちろん関連の会社群も進出してくるので全体では相応な人数にはなると思いますが、不動産価格の維持という点からするとなかなか厳しいものがあると思います。

22年の人口は78万人減です。こうみると不動産価格の下支えは今後、政府の大きな課題になるとみています。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年3月1日の記事より転載させていただきました。