アメリカの12月の住宅指数が前年同月比6.6%上昇したと報じられています。ただ日経は報道に色を付けており、見出しに「2年6カ月ぶり低い伸び」とつけています。つまり、どうしても住宅価格は低迷し、業界には厳しいものがあると言いたいわけです。記事の中身も当然ながらネガトーン一色なのですが、どう見ても前年比6.6%上昇って悪くないじゃないですか?なぜ、そこまでこじつけるのでしょうか?

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私は不動産を生業としているのでいろいろ思うところがあるのですが、割と誰も思いもしない着眼点がいくつもあります。その中で今日は、土地と建物について考えてみます。
人はなぜ、長期ローンを組んで必死にローンを返済しながらも住宅を欲するのでしょうか?基本は衣食住の必然性と同じで住むところは確保したい、できればより良いところでより広いところが欲しい、と思うのは洋の東西を問いません。つまり、住宅という器が欲しいのです。故にマンションのようなコンクリートの箱でも喜んで1億円前後の大枚をはたくわけです。
では土地とは何か、といえばそれはよりマクロ的な国家や地域の基本価値を表すものだと考えています。例えば日本が80年代のバブルになった時は器である住宅部分も上がりましたが、土地の部分の価値がより高騰したのです。それは土地から生み出される経済価値がどれだけあるか、という尺度が土地取引における価格決定要因になるためで現在のように一部の繁華街や人気ある場所の土地は上昇しているものの基本的には日本で土地の価値が上昇する要因は少ないのです。
例えばインフレになれば土地の価値は上がります。なぜなら見かけの一般物価が上昇するなら土地価格も上昇しない理由は無いからです。これをわかりやすく例えると給与のベアのようなものです。つまり土地はベースであってベア=ベースアップが土地価格の上昇だという訳です。
他方、建物は建築工事という資材と人材による加工作業ですからあくまでもそのコストプラスという考えで供給できる金額が決まるわけです。近年のマンション価格の高騰はどちらかと言えばこの建設コストの増加が主因だとみています。なのでこれも一種のコストプッシュ型のインフレとも言えます。
先日、ある木材関係の商社の方と話をしたのですが、住宅建材の需要は今後も旺盛でウクライナやトルコなどでの住宅需要が今後相当あることから世界ベースでは引き続き引き締まるだろう、とコメントしていました。一方、日本の建設従事者は97年の685万人から21年には約3割減の485万人まで下がっています。それこそ、将来は職人がいないという話も出てくるのです。とすれば今後も住宅コストは高止まりするだろうと予見できます。