黒坂岳央です。
昨今、「とにかく稼げりゃ正義!」といった風潮であり、とにかくお金があれば幸せになれると言わんばかりの意見をよく見る。しかし、億万長者になっても天涯孤独で、誰からも必要とされない人生は幸せとはいえないのではないだろうか? 個人的にお金で直接的な幸福をそのまま買うことは難しいと思っている。だが、その一方で苦痛を消し去る力は明確にあると考える。
今回はあまり語られることがない、「人生から苦痛をなくすのに必要な金額」について筆者の視点で考察したい。

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人生を生きる上で苦痛を感じる要素はいくつかある。それは何か? を俯瞰したい。
まずは衣・食・住があげられる。ここをうまく管理しなければ、生きていく上で苦痛を感じることになる要素だからだ。まずは衣、夏は涼しく、冬は温かい衣服でなければ苦痛を伴うのは明らかだ。だが最近はユニクロやワークマンなど、高品質なファストファッションが比較的手頃な価格で手に入る時代になったので衣服については巨費を必要としない要素だろう。
次に食。食については過去記事で論考したことがあるが、少食を心がけ生鮮食品を調理することで低コストで高栄養の食事を実現できる。高級食材ばかりを使った食事は逆に糖質、脂質過多になりやすい傾向がある。筆者は若い時期に経済的に貧しかったが、食は充実していたし健康だった。栄養は知識だ。知識があれば食の健康は低コストで調達することができるのだ。
そして住だ。衣食住の中で最も高コストとなる。住居は難易度が高い。職場が東京都心にあるなら、ロケーションと機能性と時間のトレードオフの中で悩むことになるからである。ロケーションに優れた都心は住居で価格を犠牲にして築古物件に住むと狭く、音の問題に直面する。広くて防音に優れた物件は高い。このバランスはかなりテクニカルであり、難しい。
一方で、地方リモートワーカーになれば住居は極端に安くなる。そのため、住居コストは働く場所、会社員・フリーランスなどの立場、職種などによってコストは大幅に変動する。ここでは比較的母数の多い東京都内のサラリーマン一人暮らしを想定すると、住居は最低でも8万円、そこそこの物件では10万円くらいのオーダーになるだろう。
筆者は昔、足立区で築40年以上の物件に住んでいたが、日当たりが悪くてカビが生えやすかったり、壁の中をねずみが走り回るので睡眠も取れなかった。住居にはある程度投資しないとQOLは著しく低下する。
最後に一番大きい苦痛を感じる要素は「人間関係」である。サラリーマン、経営者、フリーランスなど働き方に関わらず、ほとんどの人は仕事をする。そしてどの職種においても、どの年代でも最も多くの悩みが「人間関係」だ。仕事が嫌いでなくても人間関係が悪い理由で退職する人はいるし、その逆に仕事はあまり好きでなくても人間関係が充実しているという理由で、転職せずに留まる人は多い。
つまるところ、仕事で人間関係に苦労しなければ収入を得ることにそれほどの苦痛を伴うことはないし、そうなれば衣食住もなんとかなる。結論、人間関係が人生の苦痛を決める最大のファクターと考えられる。
その他には病苦などもあるが、先天的要素まで考慮すると収集がつかなくなるため、今回はシンプルに生活維持コストだけを取り上げることにする。