「ベトナムサッカーを次のステップに」
続いて行われたメディアとの質疑応答では、トルシエ監督は直近の具体的な目標などについて言及した。
記者:ベトナムA代表とU-23代表を指揮することは、大きな挑戦と言えますか?
「ご存じの通り、これまで異なる8か国の代表チームを指導してきた。その中でW杯、オリンピック、アフリカの国際大会などに出場する機会があり、200試合以上の国際大会を経験した。もちろんベトナム代表を率いることは大きな挑戦だ。培った経験を活かし、ベトナムサッカーを次のステップに導きたい」
記者:ベトナム代表を率いるに当たって困難に直面したとき、どのように乗り越えていくつもりですか?
「前任者のパク・ハンソ監督が残してくれた遺産があり、ゼロからのスタートとはならない。過去にベトナムで働いた経験も新たな任務を始める私にとって貴重な財産だ。VFFの目標は2026年のW杯出場。平坦な道ではなく、途中には波風もあるだろう。しかし、W杯出場枠が拡大したことで、我々は大きなチャンスを迎えている。困難に直面することもあるだろうが、経験を通して、困難な時期こそ学びが多いことを私は知っている。不可能なことはない。私は1人でここにいるわけではない。支えてくれる大勢の人がいる。嵐に直面した時、舵を切る必要があるかもしれないが、究極の目標が何であるのかを忘れてはいけない。今まで働いた国々の仕事への取り組み方も理解している。パートナーとなる通訳には、言葉だけでなく、私の意図や哲学を理解することを求めている」
記者:大成功を収めた前任者パク・ハンソ監督の後を引き継ぐことは、プレッシャーになりますか?
「パク監督はこの5年間、特にアジアでは素晴らしい成績を残してきた。代表監督を引き受けるにあたり、パク監督時代の限界をいかに超えるのか、いかにして次の高みに到達するのかが課せられた使命だと感じている。もちろん、ベトナムサッカーが築いた地位を維持することも重要。改めて確認するが、更なる強敵と対戦するには心の準備が必要だ」
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「ベトナムが日本に勝つことも可能だ」
記者:今後、日本代表と対戦する機会があるかもしれませんが、どう見ますか?
「サッカーでは、どんなことでも起こり得る。今回のW杯(2022年カタール)では、日本とサウジアラビアが番狂わせを演じた。アジアとアフリカの国々がワールドカップの舞台で勝利している。差は着実に縮まっている。そういった意味で、ベトナムが日本に勝つことも可能だ。しかし、10試合を戦った勝率として、9試合も勝てるだろうか?1試合だけ勝って、残りは1勝もできないかもしれない」
記者:実際に日本と対戦するとしたら、どのような心境になるでしょう?
「日本でU-20、U-23、A代表を指揮した数年間は、私のキャリアにおいて最も成功した時間と言っていい。多くの日本人が今でも私に関心を寄せてくれている。ベトナムと日本が対戦するとなったら、彼らは少し心配するかもしれないが、心情的には私を応援してくれるだろう。既に大勢の日本人から祝福の言葉をもらった。このことは私のモチベーションにも繋がっている」
記者:3大会連続の金メダル獲得に期待がかかるSEA Gamesについては?
「SEA Gamesをはじめとする国際大会は、私にとって2026年のW杯を目指す上でのロードマップに含まれている。U-23代表とA代表の監督を兼任するが、別個のチームと捉えている。U-20代表についても言及したい。2026年のワールドカップを目指すためには、22~27歳になる主力選手が必要だ。私の目標は、その中で強力な主軸選手を作ること。常に勝利を渇望する。勝利へのモチベーションを選手に植え付けたい。SEA Gamesの目標は金メダル。サッカーにおいて、勝者は常に1チームだ」
記者:パク監督時代の限界を超えたいとのことですが、パク監督の遺産として何を引き継いだのでしょうか?
「個人的にもパク監督のことはよく知っている。パク監督は、韓国代表のコーチ時代にフース・ヒディング監督の下で多くのことを学んだ。ベトナム代表での成功は、パク監督のマネジメント能力、モチベーターとして能力、求心力の高さによるもの。選手たちは良いパスを出せて、良いシュートが打てるが、規律がなければ成功はない。パク監督が選んだ選手たちは、常に戦う姿勢を持っていた。私はパク監督とは違うが、失点を抑えて多くのゴールを奪って勝つという共通の目標を持っている」
なお、トルシエ監督率いるU-23ベトナム代表は3月1日に招集、A代表も3月8日に招集され、新生トルシエ・ベトナムが本格的に始動する。