ローマ・カトリック教会の総本山、バチカン教皇庁は23日、アラビア半島のオマーンと国交を樹立したと発表した。これを受けて教皇庁の聖座とオマーンの大使館がそれぞれ相手国にオープンされる。

メッカのカーバ神殿(2023年2月26日、バチカンニュース公式サイトから)

オマーンはアラビア半島で3番目に大きな国で、イスラム教が公式の国教だ。ただ、アラビア半島では多くのアジア出身の外国人労働者が働いており、フィリピン人労働者などキリスト教徒が多い。

フランシスコ教皇は2019年、教皇として初めてアラビア半島入りし、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビを訪問、スンニ派イスラム教と基本協定を締結した。昨年はバーレーン王国(人口の75%がシーア派)を訪れるなど、アラビア半島諸国に急接近している。

このコラム欄でも報告済みだが、UAEの首都アブダビで3月1日、通称「アブラハム・ファミリー・ハウス」が一般公開される。同ハウスは、アブラハムから派生した3宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の礼拝所、シナゴーグ(ユダヤ会堂)、教会、そしてイスラム寺院(モスク)を単に独立した宗教施設としてではなく、大きな敷地の中に統合し、アブラハム・ファミリーの全容を浮かび上がらせている。

フランシスコ教皇はアブダビ訪問中の2019年2月4日、エジプト・カイロのアル=アズハル大学の総長、アル=アズハル・モスクのグランド・イマームのアフマド・アル・タイーブ師と共に「アブダビ宣言」として知られる「世界における平和的共存のための人類の友愛に関する文書」に署名した。この文書は、すべての宗教のメンバーが兄弟愛への道を歩むためのマイルストーン(道標)と受け取られ、「アイデンティティーを守る義務」「他者を受け入れる勇気」「誠実な意図」の3点を基本方針としている。

興味深い点は、バチカンがアラビア半島諸国で積極的な外交を展開している同時期、イスラエルは中東・アラブ諸国で外交的関係を急速に改善していることだ。イスラエルは久しく国交関係を樹立した中東・アラブ諸国はエジプト(1979年3月)とヨルダン(1994年10月)の2カ国だけだった。しかし、トランプ前米政権時代の2020年、UAE(2020年8月)、バーレーン(同年8月)、スーダン(同年10月)、モロッコ(同年12月)のアラブ4カ国と次々に国交正常化している。そしてバチカン、イスラエルの両国にとって残された最大の外交目標はサウジアラビアとの関係改善だ。