税収69兆円のうち、消費税が23兆円、所得税21兆円、法人税14兆円などで、今や消費税が最大の税収を生む。消費税率を上げてこなければ、財政構造はとっくに崩壊していたのに、とにかく消費税を目の敵にように扱ってきました。今後も主要な財源は消費税しかありません。

「時代的な背景」というのは、国際情勢の緊迫化に対応するための安全保障費、防衛予算の増大、少子高齢化に伴う社会保障費の拡充、子育て支援、環境対策費です。切るに切れない項目が並んでいます。

自民党筋には、MMT(現代貨幣理論)を担ぎだし、財政膨張の理論的な根拠に据える人たちがいます。「インフレが起きたら財政にブレーキをかける」というのがこの理論です。そう考えても、切るに切れない歳出項目ばかりです。増税にも時間がかかり、簡単にはいかない。

財政論は経済理論でなく政治論であることを忘れているのが、MMT理論という机上、架空の理論なのです。消費者物価4%というインフレが起きているのに、財政支出(ガソリン代や電気代の補助)を増やしている。逆のことをやっている。この理論の発案者は日本を視察するとよい。

「金融政策からの支援」というのは、日銀のゼロ金利政策(YCC・長短金利操作)で、超低利による国債が安易に発行される。金利引き上げで国債発行に伴うコスト意識を回復させることは有用でも、政治に財政の正常化の意識が回復しないと、植田氏の試みはなかなか進まない。

このところ「はやり独立財政機関が必要だ」という声が高まっています。「客観的な財政の将来展望を示す」(政府の黒字化目標は机上の空論)、「次々に浮上する政策提言・提案、スローガンを効果と費用・財源の両面から正しく評価する」、「将来つけが回ってくる若い世代に強く呼びかける」など、課題はいくらでもあります。

政府、政治から切り離した独立財政機関を設け、財政政策の客観的な検証(アベノミクスの検証は存在しない)を定期的に行うことです。G7やOECDといった主要国で、こうした機関がないのは日本だけです。

国会に超党派の財政健全化議員連盟が作られたはずなのに、名ばかりで何の動きもありません。関西経済連合会が昨年8月に独立機関設立の提言を発表しました。これなどは経団連が率先して動くべきでしょう。

デフレ脱却に向けた政府・日銀共同声明(安倍政権)は、結局、日銀に負担を押し付けただけに終わり、政府は財政正常化でも規制緩和でも努力しなかった。植田総裁が正式に就任したら、独立財政機関を設立し、日本は金融財政政策を正常化に向うとのメッセージにすべきです。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年2月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。