
西山太吉(NHKより)
外務省の機密漏洩事件(いわゆる西山事件)は半世紀前の事件だが、西山が死去した今ごろ、ツイッターのトレンドのトップに上がっている。これが「レイプ」などというデマになっているのには驚いた。この発端は門田隆将氏の次のツイートだと思われるが、事実誤認である。
西山太吉氏の死去に伴い、様々な評が飛び交っている。だが利用された外務省の女性秘書の手記(週刊新潮1974年2月7日号)をせめて図書館で読んでから論評される事をお勧めする。毎日新聞がなぜ倒産にまで至ったかは、当事者でなければ明かせない女性秘書の渾身の告白を読めば分る。胸が締めつけられる手記 ZDDBZduuQw pic.twitter.com/UTtU9NU6rm
— 門田隆将 (@KadotaRyusho) February 26, 2023
元ツイートの「外務相女性事務官を酩酊させ男女関係を結び、その弱みに付け込んで密約文書を持ち出させていた」という事実はなく、もちろん強姦などはなかった。これは最高裁判決も認めている。判決はこう書いている。
西山記者の取材に違法性はなかった被告人[西山]は、昭和四六年五月一八日頃、従前それほど親交のあつたわけでもなく、また愛情を寄せていたものでもない前記B[蓮見]をはじめて誘つて一夕の酒食を共にしたうえ、かなり強引に同女と肉体関係をもち、さらに、同月二二日原判示「ホテルC」に誘つて再び肉体関係をもつた直後に、前記のように秘密文書の持出しを依頼して懇願し、同女の一応の受諾を[得た]
まず大前提として判決は、西山の取材行為には、強姦や強要など一般の刑罰法令に触れる違法性はなかったと認定している。その上で「取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する」取材方法は認められないとして、国家公務員法111条違反(そそのかし)で有罪とした。
その「人格の尊厳を蹂躙する」行為とは何か。判決には「かなり強引に」という言葉が1ヶ所だけ出てくるが、1971年5月18日の最初の密会の翌日、蓮見は電話で2回目の密会の場所(ホテルニューオータニのバー)を指定した。そして判決にも書いているように、5月22日にまたホテル山王で密会したのだ。性行為を強要された女性が、次回の密会の場所を指定するだろうか。
その後も、指定された資料を「ばらばらに旅館に集まって渡した」と週刊誌の手記に書いている。これも明らかに自発的に集まったものだ。澤地久枝『密約』は、蓮見が肉体関係を強要されたという供述に疑問をもち、彼女と半年ぐらい肉体関係のあった男性X氏の証言として次のように書いている。