ホテルに誘ったのは蓮見秘書だった
男女関係は、当事者以外にはわからないが、沢地久枝『密約』は蓮見が複数の男性に声をかけていたという証言を記し、蓮見のほうから誘ったのではないかと推理している。ある男性はこう語っている。
蓮見さんから誘われて、また外で会った。[…]店を出て歩きはじめると、酔うほどのアルコールではなかったはずなのに、酔いがまわったように足元が危くなった。歩けないという。タクシーに乗せると、正体がなくなったように軀をもたせかけてきた。とてもそのまま帰れる状態ではなく、どこかで休んで…ということになった。
西山の親友だった読売新聞の渡辺恒雄は「西山記者が、彼女との関係の進行に関する事件のプロセスをすべて明らかに出来ないでいる事実を私は知っている。ついに保護しきれなかった情報源を、これ以上傷つけたくないからであろう」と弁護し、蓮見が誘ったと推測している。
私が西山君から聞いたところでは、西山君が帰宅しようとする蓮見事務官を自社の車で送ったところ、彼女が「飲みたい」と言い、したたか酔った段階で「一休みしましょう」と連れ込み宿に誘い入れた。(『サンデー毎日』2012年2月19日号)
どっちが誘ったかは大した問題ではないが、取材した記者を機密漏洩で有罪にすることは、民主国家であってはならない。これは特定秘密保護法よりはるかに危険な判例である。
本筋は沖縄の基地返還をめぐる密約で、それは確かに存在したのだが、外務省のねらい通り、この不倫騒動で忘れられ、民主党政権がその存在を認められるまでには30年以上かかった。役所のスキャンダルを隠すために検察を利用する国家権力の恐ろしさと、それに対するマスコミの無力を痛感する。