次に学生のケースです。バンクーバーの英語学校では様々な国の学生がワイガヤし、かなり多いフィリピン人のホームスティ先で英語漬けとなり、「とても勉強になった」という声はよく聞くのですが、「あれ、あなた、カナダ人となにか話した?」と聞くと「韓国人、ブラジル人、フィリピン人、あとは???…」で結局、カナダ人の先生以外喋っていないじゃないか、ということもあるわけです。つまり、カナダまで来て英語学校留学というアミューズメントパークに来たようなものです。

それでも日本に帰ると「語学留学経験」は妙に先輩面できるもので外国人との応対でどうしようということになれば「私がやる!」という勇気は生まれるのです。これは良い面。

中には英語がバリバリに上達する方もいます。ざっくり10人に一人ぐらいは驚くほどの上達で私なんて全くかなわないレベルの人は結構います。その人たちにも悩みはあるのです。英語が上手、ということは現地の人から面白い話やタメになる話をかなり聞き込んでいるので脳内に一定の常識観の変化が生まれるのです。これが時として日本に戻ってから日本人社会に同化できず、スピンアウトしてしまう場合です。「帰国子女の悲劇」なんていう小説があってもおかしくない、そんな感じです。

同様に企業が優秀な社員を海外の大学院にMBA留学させることも再び増えてきたようですが、これも危険極まりない経営判断です。なぜか、と言えばほとんどが帰国後、辞めるからです。2年間の海外生活で日本の組織論が自分の学んだ内容とマッチせず、自己否定を起こすのです。私が以前勤めていたゼネコンでも私の知る限り約10名ぐらいいたMBA留学者はほぼ全員1年以内に会社を辞めています。

私は以前、飛行機で成田空港に着いた瞬間に日本モードにギアチェンジすると申し上げたことがあります。つまり、使い分け。性格から振る舞いから何から何まで二重人格者のようにしないと日本で仕事ができないのです。これが苦痛かといえば私はそれなりの年齢ですのでむしろ楽しんでいますが、若い方には許せないだろうな、と思います。

海外留学も善し悪しです。若い方はこれからもどんどん海外経験をすると思います。その中で少しずつ、国内の海外に対する常識観も変わっていくのだろうと察しております。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年2月26日の記事より転載させていただきました。