プーチン大統領President of Russiaより

プーチンを英雄視するロシア国民

表題については、多くの場合、プーチン自身が自らの保身によって、自らを追い詰めたというのが一般的な見方であるし、それは間違ってはいない。

専制主義で国家を運営している、例えば共産主義政治の如きは、計画経済が上手に機能している間はいいかもしれないが、特権階級を作り、自らの権力行使の仕組みを恐怖政治で作り上げてしまったプーチンのような独裁者は、自分と同じ考え方で、自らが権力の座から降りても、プーチンの戦争犯罪や独裁政権によって得た不法な富について追求する人間はいないと考えている。

以前にも触れたように、プーチンは旧ソヴィエト連邦の腐敗政治と強権力を行使した国民生活の圧迫と、秘密警察等の力を行使した圧政による特権階級政治しか知らないため、裏を返せば、彼が理想とする国家、強大な力を行使し得る政治体制は、共産主義体制によるエリート層の国家運営こそが、理想的な強国になり得ると信じているのだ。

旧ソヴィエト連邦が崩壊し、エリツィンがロシア共和国の大統領からロシア連邦の初代大統領に就任したことは、プーチンを勇気づけることになったことは、拙稿でも触れさせていただいた。KGB時代を経て地方行政のトップに就いたプーチンは共産主義の持つ腐敗構造を上手に利用し、権力さえ掴めば富も権力も意のままになることを学んだ。

また、今では様々な状況証拠と、当時のビル爆破事件に関わった旧KGB、とFSB関係者によって、チェチェン共和国の独立紛争がロシア連邦のFSBによって仕組まれたことだとよく知られた話ではあるのだが、プーチンは不正な蓄財を重ねたエリツィンへの追求を行わず、かつ、自身もサンクトペテルブルク時代の罪を逃れるため、またエリツィンの手法を踏襲する形で不正な蓄財を行うため、そしてこれがもっとも重要だが、自らがロシア連邦の最高権力者に上り詰めることで、彼の理想とした旧ソヴィエト連邦の復興を目指し、対外的にはかりそめの自由主義国家建設を内外に示してきた。