ハップル(Hubble)の後継者、ジェームズ・ウェッブ(James・Webb)宇宙望遠鏡から配信された最初の写真を見た時、感動が大きかった。30年間、約2万人のエンジニア、プランナー、研究者が参加し100億ドルをかけて建築されたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡から送られた画像を始めてみたボルチモアの宇宙望遠鏡科学研究所のクラウス・ポントピダン氏は、「天文学の新しい時代が始まろうとしていることに誰もが気づくだろう」とその感動を語ったほどだ(「戦争報道写真と宇宙からの『画像』」2022年7月13日参考)。
ウェッブの使命は、宇宙の果てまで見ることだ。若い宇宙の真っ暗闇の中で最初の星が発火した瞬間を撮影する、という目的だ。独週刊誌シュピーゲル電子版は、「聖書の創世記第1章『神は光あれと言われた、すると光があった』という瞬間をキャッチすることだ」と説明している。
オーストラリアのスウィンバーン工科大などの国際研究チームが今月22日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表したところによると、「地球から131億光年以上離れた遠い宇宙に、質量が非常に大きな銀河とみられる6個の天体を発見した」という。この発見もジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の成果だ。
ウェッブ宇宙望遠鏡から届く画像やデータを見ると、眩暈を覚えるほどだ。その無限な天体に圧倒される。人類は過去から現在に至るまでいがみ合い、戦争を繰り返してきた。そのことが地球という惑星に住む人類の汚点と感じるほど、宇宙は無限な神聖さを秘めている。
プーチン大統領はクリミア半島もドンバス地方もロシア領土と主張して戦争を始めたが、そのナラティブ(物語)にどれだけの真理があるのか。習近平主席は一つの中国を主張し、「台湾は中国領土」と豪語しても、その世界観は余りにも小さい。
人類の生活、思考も地球の重力の影響を受けてきた。トランプ前米大統領はアメリカン・ファーストを宣言したが、地球オンリー的な思考から抜け出すことができないでいる。ウェッブ宇宙望遠鏡がもたらす天体の画像は、私たちに地球オンリーの思考、世界観から脱皮すべき時を迎えていると告げている。プーチン氏よ、宇宙に目を向け、新たなナラティブを学べ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年2月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。