生命保険で、どうしたら夢が語れるのか。赤ちゃん保険や子供保険は、昔の売れ筋商品だが、今でも、人気があるのではないか。これは、保険とはいっても、子供の成長にあわせた給付金が魅力になるようにしてあって、まさに、親にとって子供の成長こそが夢だから、人気があったのである。

こうして、子供保険を導入にして、子供が成長して、教育が親の最大の関心事になるころに、万が一に備えた遺族の生活保障として、生命保険を提案していく、これが古典中の古典の生命保険営業の手法だった。親にとって子供の成長が夢だから、扶養義務を果たすことも夢となり、その夢の実現手段として生命保険があったというわけである。

資産形成では、老後生活の夢を語るということになる。金融庁が施策に掲げる資産形成は、老後生活資金の長期的な形成を主眼としたものだが、本来は、個人ローンと消費の関係と全く同じで、消費を目的にした計画的な積立として、一般化すべきものである。つまり、金融機能としてみるとき、ローンと資産形成との差は、先に買って後でローンを返すか、先に貯めて後で買うか、それだけの時間軸の差なのである。

夢の実現は早いほうが楽しい、そう思うなら、借りて買えばいい。しかし、夢というのは簡単には実現しないから、夢であるわけで、また、夢は温めているうちに膨らんでいくから、夢であるわけで、それなら、資産形成を工夫して、資産と夢が並行して大きくなっていく過程を楽しむこともできるわけだ。

まずは、資産形成を、夢の実現手段として、確立しなければならない。その先に、老後生活の夢が見えてくる。現在の夢をかなえるよりも先に、遠い老後の夢を思い描くなどということは、不自然の極みなのである。

森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行