目次
企業とAI倫理の向き合い方
 ・独自のAI倫理原則だけでは足りない
 ・AI倫理に対する注目度の低さという課題
パナソニックで働くAI人材
 ・AI人材の定義
 ・AI倫理の必要性の高まりはAI普及の証
 ・今後のAI人材育成
 ・パナソニックでAI開発を行うメリット
 ・まとめ

企業とAI倫理の向き合い方

独自のAI倫理原則だけでは足りない

・現状、企業独自のAI倫理を発表している企業は一握りですが、今後各企業が独自のAI倫理を持っていくべきでしょうか。

丸山-企業にとって、AI倫理原則は、人権に配慮されたAI製品を責任をもってお届けするというお客様との約束と考えられますので、その目的に沿って十分な内容のAI倫理原則の策定が重要であり、必ずしも独自性は必要ではないと考えています。

むしろ、その約束をしっかり果たすために、AI倫理リスクをチェックするプロセスはしっかりと作って機能させていかなければならないと思います。

とはいえ、現時点で我々も含め多くの企業では、AI倫理に対する経験が浅く、例えば”自分たちの製品が差別を助長するか”などの倫理的な判断を行える高位平準化されたプロセスが十分ではないと感じます。

したがって、事例を積み重ねて、例えるなら裁判の”判例”のようなものを作っていくことが必要であると考えます。

パナソニックグループが考えるAI倫理の必要性と求められる企業の向き合い方とは
(画像=『AINOW』より引用)

AI倫理に対する注目度の低さという課題

・世間のAI倫理に対する注目度はいかがでしょうか。

丸山- 昨今、注目は高まってきていますが、AI倫理の重要度に対して十分とは言えないと感じます。AIが社会や人々の生活へ浸透していく中で、例えば公平性やプライバシーに関する問題などがより顕在化し、企業には責任ある対応が今以上に求められてくると思います。

AIと人権侵害には社会全体が関心を持っていくべきだと感じています。

パナソニックで働くAI人材

AI人材の定義

・パナソニックグループでは1200人の”AI人材”を抱えていますが、この”AI人材”の定義を教えてください。

佐藤-AI人材に関しては各社公表していて、その基準にもバラつきがあると思いますが、パナソニックグループでは“独力でAIを開発できる人材”という形でAI人材を定義づけています。

1200名の方がAI開発を行えるスキルを持っていて、その中のかなりの割合の方が業務においても活用しているという形です。

AI倫理の必要性の高まりはAI普及の証

・現場にAIが浸透しているからこそ、AI倫理原則の必要性が生まれたということでしょうか。

佐藤-その通りです。実際、2019年の段階ではAI倫理のリスクと自分が担当するAI製品を結び付けて考えることが難しい状況でした。

ただ、人材の育成や事業でのAI活用が進む中で、AI倫理の必要性が増し全社で倫理原則を遵守しようという風土が醸成されてきたことを実感しています。

今後のAI人材育成

・今後のグループ全体としてのAI人材の育成の方針について教えてください。

佐藤-具体的に”次は何人を目指す”という数字を公表しておりませんが、AI人材のニーズは依然高いので、年間150人から200人ほどのペースで育成が進んでいる状況です。

加えて、Kaggle Grandmasterという世界トップレベルのデータ分析スキルを有する社員を講師に据えた独自講座の開講など、より応用的なスキルを学ぶことが出来る研修も強化し、既存のAI人材のスキル向上へ向けた取り組みも行っています。

したがって、既存の1200人のAI人材に関してもスキルの向上へ向けた取り組みを行なっています。

パナソニックでAI開発を行うメリット

・AIの研究開発に関心のある方がパナソニックグループでAIの研究開発を行うメリットを教えてください。

佐藤-様々な事業を持っているという点がメリットとして大きいと思います。AIの実用化にあたって、多様な事業領域それぞれに、挑戦しがいのある課題と豊富なデータがあるので、興味関心にフィットするデータと研究開発テーマが見つかると思います。

社会実装にあたっては当然難しい部分や課題がありますが、世の中の役にたてているという実感を持つことが出来る環境でもあると思います。

さらに、先ほど述べたように応用先がかなり広いので、所属している技術者や研究者のバックグラウンドもバリエーション豊かです。多様な分野のプロがいるので、スキルの向上を目指すうえでもかなり、刺激的な環境だと思いますよ。

また、パナソニックグループではスタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校など、国内外のトップのAI研究機関とも密に連携しています。アカデミアに負けないほどの挑戦ができると言っても過言ではない環境を備えていることも、大きなメリットであると思います。

パナソニックグループが考えるAI倫理の必要性と求められる企業の向き合い方とは
(画像=『AINOW』より引用)

まとめ

今回はパナソニックグループが発表したAI倫理原則に関して、発表までの道のりや企業とAI倫理の向き合い方についてのお話を伺いました。

今回のインタビューでは、AI倫理原則を発表するだけでなくリスクチェックシステムの構築など、その後の取り組みが最も重要であることが強調されました。

したがって、私たちも引き続きAI倫理の動向をチェックすることや、他人事ではなく自分事としてAI倫理について考えていく必要があるといえるでしょう。

提供元・AINOW

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