近年、中国ではトレーディングカードブームが熱を帯び始め、話題を膨らませていた。新たなトレーディングカードが続々と現れ、「ウルトラマンカード」や「ポケモンカード」などといった日本発のものは現地でも人気を集めていた。ネット上で頻繁に行われるカード売買に、続々と開催されるオフライン大会からも中国トレーディングカード市場の活気が伝わってくる。

目次
ウルトラマン、ポケモンなどの日本トレカが大人気
トレカブームの背景には中国IP市場の成長がある

ウルトラマン、ポケモンなどの日本トレカが大人気

現在、中国市場では様々なトレーディングカード(以下トレカ)が打ち出されている。タオバオなどのECアプリで検索にかけると中国や日本、アメリカの人気IPのトレカを見つけることができる。

中国で日本のトレカが大流行している理由とは?
(画像=▲ タオバオで販売されている様々なトレカ(筆者よりスクショ)、『チャイトピ!』より引用)

また、WeiboやDouyin(中国版TikTok)といったSNS上ではトレカ発売の宣伝にあふれ、オフラインでは地下鉄駅構内といった所で大々的に広告が行われている。

中国で日本のトレカが大流行している理由とは?
(画像=▲ 上海地下鉄駅構内のワンピースカード広告(筆者より撮影)、『チャイトピ!』より引用)

現地の小学生たちに大人気であり、注目を集めているトレカの一つが「ウルトラマンカード」。

日本の特撮として、ウルトラマンは中国の子どもたちだけでなく、大人にも多くのファンを有している。ウルトラマンがもたらすIP効果以外に、1パック8枚入りで1~2元(約20~40円)という値段の安さも購入のハードルを下げており、子どもからすると気軽に買えるものになっている。また、ウルトラマンカードを買うのは同年代のグループに溶け込む、友達を作るためといった社交的な理由もある。

カードゲーム大手「卡遊(Kayou)」のT-mall公式オンラインショップでは、ウルトラマンカードが月間1万件以上売れており、売り上げランキングではトップを飾っている。また、アーケードゲーム用のウルトラマンカードの販売事業を手がけている「華立科技」も好調を見せており、2021年度の決算ではウルトラマンカードを含むIP関連グッズ事業の売上高は1.75億元(約35億円)と前年比157%上昇した。

もう一つ人気を誇っているのが「ポケモンカード」だ。現地メディア・北京商報の報道によると、昨年11月に玩具チェーン店「X11」では数量限定のポケモンカードのギフトボックスが販売初日で売り切れとなった。

また、愛好者ら集まるグループチャットでは対戦用もしくはコレクションを目的としたカードの売り買いが頻繁にやり取りされている。カードの相場はトレカ売買のアプリで確認することができ、希有で人気なカードには高い値段がつけられている。

中国で日本のトレカが大流行している理由とは?
(画像=▲ カード売買のやり取りの様子(筆者よりスクショ)、『チャイトピ!』より引用)

さらに、中国各地のポケモンジム(公式認定されたトレカ専門店等)では今でも新人交流会やジム戦といった対戦のイベントが行われており、活気を見せ続けている。

トレカブームの背景には中国IP市場の成長がある

中国でトレカがブームになっている理由としては以下の3つが考えられる。

  • 経済の成長
  • 中国IP市場の成長
  • 未成年オンラインゲーム依存対策政策の実施

中国のGDPは年々増加しており、それに伴って国民の経済力も向上している。そうした中で、現地消費者のニーズも今まで以上に増え、非常に早いペースで変化している。

また、中国トレカブームの背景には、近年中国におけるIP市場の盛り上がりも深く関わっている。

IP(Intellectual Property)とは知的財産を指しており、アニメ・マンガ・キャラクター・人物など様々なものが含まれている。

人気IPの集客力はトレカブームを支える重要な要素の一つだ。好きなIPの絵が印刷されているカードを目当てに購入する消費者は少なくない。中国では「スラムダンク」や「ウルトラマン」など、日本のアニメや特撮が幅広い年齢層から支持を得ており、そうした人たちはトレカの潜在的な消費者だ。また、駄菓子に付属する「水滸伝カード」がかつて人気を見せており、トレカ文化は以前から現地で受け入れられてきた。

さらに、当局が2021年8月ごろに打ち出した「未成年オンラインゲーム依存防止対策」もトレカブームに影響を与えた。これにより、未成年者のオンラインゲームプレイ時間は金曜~日曜の1時間に大幅に制限され、その反動で子どもたちの興味はトレカへと移った。