「自然がくれた益子の里山の恵みを、みなさまにどうしたら体感してもらえるだろう・・・」
益子舘の思いはそこから始まりました。
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栃木県益子(ましこ)町と聞いて、なにが浮かびますか?
益子焼?
はい、そうですね。益子は全国的にも有名な焼き物の里です。
1年に2度開かれる陶器市には、人口22,000人に満たないこの町に全国から、春には約40万人、秋には約20万人もの人々が訪れます。
しかし、益子町はそれ以外、例えば旅行で訪れる人はそれほど多くなく、首都圏から2時間圏内という交通の便の良さもあって、宿泊施設も少ないのが現状です。
そんな益子の町で「自然がくれた益子の里山の恵みを伝えたい」と誕生したホテルが「益子舘(ましこかん)」です。
今回、この旅館に宿泊しましたので、その魅力をお伝えしたいと思います。
益子の町に温泉旅館が誕生
栃木県には、日光という大観光地があり、鬼怒川温泉を始めとする温泉街、那須を代表するリゾートなどがあります。
しかし益子は「陶芸の町」という以外にいわゆる観光要素は少ない。
実際、町は見渡す限り田園です。はっきりいって田舎。でもこの田舎が今、見直されてきています。
「日本の原風景」ともいわれる里山が、今もなお残っている落ち着いた町。
「自然豊かなこの益子の地で、地域の皆さんに、温泉や集まって宴を楽しんでもらえるような場所を作りたい」という初代 髙橋正直社長の思いをカタチにしたのが、益子館の前身である「温泉健康センター」です。時は1990年11月のことでした。
温泉健康センターには、農閑期に地域の人たちが集い、温泉に入って、家族や仲間と宴会をしたり、演劇鑑賞をしたりして楽しみました。
そのうち「宿泊できる施設が欲しい」と要望を挙がるようになり、宿泊棟を建設し温泉旅館「益子舘」として今に至っています。
益子町には今も温泉旅館は益子舘1軒のみです。
現在は2005年に社長を受け継いだ髙橋 美江さんが女将として宿をきりもりしています。
益子舘は、静かな里山の中に佇んでいます。
益子舘スタッフのおもてなし
益子舘の願いは「懐かしい日本の原風景、素朴で温もりのある温泉宿で、季節の移ろいを感じながら、心と体を癒してほしい」というものです。
宿に到着して私が感じたことは「スタッフがさりげなく親切」ということです。
例えば「お客さんへの声かけ」。ロビーから宿泊棟に向かうには階段を上がり、エスカレーターを使います。
スタッフはエスカレーターに乗る時、館内の案内をする時に、お客さんに優しく声をかけます。
それも、いかにも温泉旅館のかしこまったマニュアル的な言葉ではなく、自然にさりげなく、親しみのある声のかけ方なのです。
髙橋社長が仰います。
「おもてなしは日々の積み重ねです。急には変えられません。いくら表面を繕ってもうまくいかない。一番大切なのは、お客さまがどういう思いでここに来られているのかを感じ取れるか、です。スタッフのこころの教育が大事だと思っています。」
ロビーでは、益子焼が展示販売されています。
ホテルロビーから宿泊棟へのエスカレーターには、ランタンの飾りつけがありました。
お部屋までの廊下は、木のぬくもりが感じられる温かい空気が流れていました。